
読書会で、みんなで課題本を読んで感想を言い合うのって、単におすすめ本を紹介し合うより、参加者同士の親密感が増して盛り上がったりしますよね。
ファシリテーターにとっては、どんな本を課題本に選ぶかはセンスを問われますし、腕の見せ所のひとつです。
今回は、読書会主催歴4年のマッキーが、参加者の性別や年齢などに左右されない、読みやすく参加しやすい課題本の選び方と、読書会が盛り上がる仕掛けの作り方をご紹介します。
課題本を選ぶ基準は?
わたしが読書会で課題本を選ぶ基準を6つご紹介します。
文庫化されていて入手しやすい
参加者はネットや近所の書店で課題本を購入することを考えると、市中に出回っていて入手しやすいかどうかは重要です。
絶版されているレアな本は、課題本には最もふさわしくありません。
文庫本になっている作品は、サイズや価格の面でも手軽で、好ましいと言えます。
読書会に参加するのは社会人が多く、読書をする時間も限られていることを考えると、小説であれば「中編小説」もしくは「短編集」が適しています。
文庫の厚さでいうと、2センチ以下が読みやすいでしょう。
また、話題になっているビジネス新書を課題本にするのも、盛り上がると思います。
2冊目以降も読める状態の作家
読書のジャンルは、個人によって傾向が分かれます。
ビジネス書しか読まない人、ミステリしか読まない人は結構います。
そういう意味で、課題本のある読書会に参加する人は、「読んだことのない作家の作品を読んでみたい」という気持ちの強い人であることが多いです。
そういう参加者のために、作品が複数書籍化されている作家を選びましょう。
「この作家は面白かったから、他の作品も読みたい」と思った時に、他に読める作品がないとがっかりしますよね。
特に翻訳本を課題本にすると、1冊しか書籍化されていないという作家もいますので、気を付けましょう。
男女ともに読みやすい
読書会には、年齢や性別、職業といったバックグラウンドが異なる人たちが参加します。
なるべく性別や年齢によって好みが分かれにくい本を選んだ方が無難です。
例えば、林真理子さんの『美女入門』は非常に面白いエッセイ集で、中身を読むと割と男性でも楽しめそうな内容ですが、タイトルからして男性(特に年齢が上がるほど)には、ハードルが高く感じると思われます。
また、恋愛の場面が多い小説などは、異性がいると恥ずかしくて感想を言いにくい人が多いと思われるので、配慮が必要です。
文学賞受賞作
芥川賞や直木賞など、文学賞を受賞した作品を課題本にすると手堅いです。
特に芥川賞は中編小説が多く、ボリューム的にも読みやすいです。また読者によって感想や解釈が分かれることが多く、意見交換が盛り上がります。
文学賞受賞作はネームバリューがあり、参加者の興味関心も高めなので、課題本にしやすいでしょう。
有名だけど読んだことがない作品
「聞いたことはあるけれど、読んだことがない作品」というのは、たくさんありますよね。
例えば、国内外の文学賞受賞作でも結構あります。
「有名なのに、読書会で一度も紹介されたことがない作品」などは、特に狙い目です。
読書会の課題本にすると、「気になっていたけれど読んだことがないから、これを機会に読んでみよう」と思う人は、それなりにいます。
みんなが知っている作品は、入手しやすい本でもあるので、課題本に向いています。
常連さんに訊いてみる
何を課題本にするか悩むときは、常連の参加者にどういう本がいいか尋ねてみるのも一つの方法です。
注意点は、「特定の参加者の意見ばかりを取り上げている」とみんなから思われないようにすることです。
読書会の人間関係は、そのまま会の雰囲気等に影響するので、気を付けましょう。
読書会をさらに盛り上げるコツ
課題本を選んだら、読書会がさらに盛り上がるよう、ファシリテーターは次のことを気を付けると良いと思います。わたしがいつも実践していることをご紹介します。
ファシリテーターがやるべきこと
まず、課題本をじっくり読み込みましょう。
参加者の誰よりも、作品を深く理解するつもりで、2回以上は読んだ方が良いと思います。
そういう意味でも、長編小説を課題本にすると少し大変かと思います。
参加者が「△△の場面で、主人公が××した時」と言った場合に、ファシリテーターが「そんな場面あったかな」という感じだと、読書会が盛り下がります。
わたしは、読書会当日参加者の意見にすぐに反応できるよう、登場人物の相関図を作ったり、章ごとのあらすじ一覧を作ったりしています。
また、自分の疑問点や、人によって解釈が分かれそうなところには、付箋を貼ったり、ノートに書き出したりしています。
こういう努力は必ず報われますし、読書会がスムーズに進むので、ぜひやってみてください。
「質問」という仕掛けを作ろう
課題本を設けると、参加者も普段の読書より少し気合のようなものが入ります。
その気合がより入るように仕掛けを作ってあげると、読書会は盛り上がります。
その仕掛けとは、「共通質問を出す」ということです。
例えば、短編集なら「どの短編が一番好きですか?」とか、中編なら「どの登場人物に一番共感できましたか?」とか、簡単な質問でOKです。
「これを念頭に置きながら読んできてくださいね」という参加者共通の質問を出しておくと、参加者の読み込み方が深くなります。
例えば、「何も考えずに筋トレをする人」と、「どの筋肉を鍛えるか意識しながら筋トレする人」では、筋肉の付き方が変わると言います。
そんな感じで、「気をつけて読んでほしいところ」という仕掛けを作ると、読書会も散漫になりません。
読書会の醍醐味のひとつは、「他人の感想や意見を聞いて、さまざまな価値観に触れ、自分との共通点や相違点を楽しむこと」です。
質問を設けると、共通点や相違点が浮き彫りになります。これが読書会を盛り上げる大きなコツだと思っています。
読書会は国語のテストと違い、質問に対する「正解」はありません。「他人との違いを楽しめる質問」を出すと、おもしろい読書会になります。
読書会では、質問の内容以外の感想や意見もたくさん出ますので、「質問を設けると、読書会の内容が狭まるのではないか」と心配しなくても大丈夫です。
参加者に質問を出すタイミングは、開催告知の時です。
「次回の読書会の課題本は〇〇です。“自分が主人公だったら、どういう行動をするか”ということについて、考えてきてください」というふうに案内をするといいでしょう。
まとめ
みんなが楽しめて、参加しやすく、読書会が盛り上がる課題本を選ぶのは、ファシリテーターにとって楽しみでもあり、悩ましいものでもありますよね。
今回は、わたしが普段どのような基準で課題本を選んでいるか、課題本をより深く楽しむためにしている工夫をご紹介しました。
また、読書会の集客の仕方などは、こちらの記事をご参考ください。