2020年に『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した『元彼の遺言状』。
主人公・剣持麗子の元彼である森川英治は、製薬会社の御曹司でした。
「僕を殺した犯人に全遺産を譲る」という奇妙な遺言状を残して亡くなっています。
「英治は、なぜ犯人に遺産相続させようとしたの?」
と不思議ですよね。
原作小説では、ラストでちゃんと理由について説明してあります。
この記事では、
- 森川英治の遺言状の内容は?
- 英治が奇妙な遺言状を残した理由は3つ
について、分かりやすく解説します。
遺言状の内容をしっかり把握しておかないと、奇妙な遺言の理由が分かりません。
まず遺言状の内容を、次に理由を解説しています。
原作小説の内容がネタバレしていますので、ご注意ください。
また、TVドラマは原作小説の内容を変更して構成される可能性もあります。
ドラマと原作小説では、「英治が犯人に遺産相続させようとした理由」が異なる場合もありますので、ご了承ください。
\一気読みできる面白さ/
【元彼の遺言状】森川英治の遺言状の内容は?
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— 【公式】綾瀬はるか×大泉洋『元彼の遺言状』4月11日スタート月9 (@motokare_cx_) April 4, 2022
♦️5日(火) 24:25~24:35
♦️6日(水) 24:25~24:35
♦️7日(木) 24:25~24:35
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関東ローカルの放送ですが、
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『元彼の遺言状』の主人公・剣持麗子は、学生時代に森川英治と交際していました。
森川英治は、森川製薬の社長の息子で大金持ち。
英治はうつ病を患ったのちに、インフルエンザで亡くなったと診断されました。
英治には、合同会社の持ち株など含めると、1080億円もの資産がありました。
そして、摩訶不思議な遺言状を残していたことが、死後分かります。
「英治は、なぜ犯人に遺産相続するという遺言状を残したのか?」
という理由を理解するためには、まず遺言状の内容を知っておく必要があります。
英治は二通の遺言状を残しました。
まずは、一通目の遺言状を見てみましょう。
一、僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る
一、犯人の特定方法については、別途、村山弁護士に託した第二遺言に従うこと。
一、死後、三カ月以内に犯人が特定できない場合、僕の遺産はすべて国庫に帰属させる。
一、僕が何者かの作為によらず死に至った場合も、僕の遺産はすべて国庫に帰属させる。
引用元:新川帆立『元彼の遺言状』宝島社文庫
次に、二通目を見てみましょう。
二通目はボリュームがあるので、要点だけまとめました。
内容は大きく2つあります。
【1】犯人の特定方法
- 森川金治(代表取締役社長)
- 平井真人(取締役副社長)
- 森川定之(取締役専務)
役員3人全員が犯人と認めた人を、遺言の適用上「犯人」とする。
※犯人が刑事罰を受けることを望まないので、どんどん名乗り出てほしい
※関係者は守秘義務を守り、選考内容を警察に漏らしてはならない
(犯人は臆せず名乗り出てほしい)
【2】英治を支えた人たちへの遺贈
- 中高校で所属していたサッカークラブの仲間
- 小学校から高校までの担任教師
- 大学時代のサークル仲間
- 大学時代のゼミ仲間
- 英治の元カノ(元カノリスト参照)
- 行きつけの美容師、薬局店員、愛用の石鹸会社の社長
- 愛犬バッカスの主治医・堂上など、犬に関わった人たち
などなどに、熱海などの土地や別荘を相続するという遺言を残していました。
この遺贈についても、森川家から3人が立ち会うよう指示されています。
以上、二通の遺言状の特徴として押さえておきたい点は、
- 会社役員に「犯人選考会」を開くよう指示
- 犯人にどんどん名乗り出るよう伝えている
- 3カ月という期限がある
- 犯人が特定できなかった場合などは、国庫に帰属させる
- 英治の知人・友人にも遺贈し、森川家が相続手続きに立ち会う
という5点です。
【元彼の遺言状】森川英治が犯人に遺産相続する理由はなぜ?
本日もあります
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森川英治が「僕を殺した犯人に全財産を譲る」と遺言したのには、深い理由がありました。
しかも、3つもあったのです。
小説を最後の方まで読まないと、理由だけ読んでも理解できない仕掛けになっています。
また、TVドラマにするには原作小説は尺が短いので、ドラマオリジナルの事件などをたくさん盛り込んでいるようです。
そのため、ドラマと原作小説では、「英治が犯人に財産を譲ろうとした理由」が異なっている可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
【理由1】ゲノムゼット社の株式を国庫に帰属させるため
「英治が犯人に全財産を譲ろうとした理由」の1つめは、「ゲノムゼット社の株式を国庫に入れるため」です。
原作小説では、森川製薬が新薬として開発したのは「マッスルマスターゼット」という筋肉補助薬です。
(ドラマでは「鎮痛剤」に変更されています)
業績不振に陥っていた森川製薬は、社運をかけて新薬開発します。
新薬担当だった森川拓未は、バイオ業界で有名なベンチャー企業のゲノムゼット株式会社に目をつけました。
ゲノムゼットは先駆的技術を持っていたのです。
さらには、ゲノムゼット社は、破格の条件で株主を探していたのでした。
拓未は、かなり良い条件で安く株式を手に入れ、ゲノムゼット社を買収します。
この時、拓未と英治の二人で、ゲノムゼット社の株主となったのです。
ところが、その後に問題が起きました。
「ゲノムゼット社の株式を売ってくれ」と、指定暴力団につけ狙われるようになったのです。
ゲノムゼット社の技術で、証拠の残らない殺人薬や筋肉増強剤を作れば、大金を手に入れられます。
暴力団の脅しに耐えられなくなったゲノムゼット社は、拓未に株を安く譲ったのでした。
急いでいた拓未は、十分な事前調査をしないまま、ゲノムゼット社を買収してしまったのです。
結果、ゲノムゼット社の技術で新薬は開発できたものの、拓未と英治は暴力団の扱いに困り果てます。
そこで、村山弁護士も交えて考えついたのが「株式資産を国庫に帰属させる」という方法です。
株式などの資産が国庫に入れば、暴力団も手を出せません。
一方、開発した新薬は、資本が国庫に入っても認可してもらえるよう、拓未が厚生労働省に根回しをしたのでした。
遺言書では、「犯人に相続するのは3ヶ月以内」という期限がありました。
これは、株式が国庫に入るまでの3カ月間で、拓未が新薬認可されるようにするための時間稼ぎだったのです。
【理由2】森川拓未を守るため
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英治が「犯人に全財産を譲る」と遺言したのは、第一に「ゲノムゼット社の資産を国庫に入れるため」でした。
「だったら、最初から遺言書にそれだけ書けば良かったのでは?」と思いますよね。
なぜ、殺人犯や元カノなどにまで遺贈しようとしたのでしょう?
理由は、「拓未を守るため」に、英治が発案したのでした。
拓未は、暴力団というやばいコブ付きのゲノムゼット社を買収してしまいました。
役員にバレたら、拓未のキャリアに傷が付くと、英治は心配したのです。
周りからは「拓未と英治はライバル同士」と見られていましたが、当人同士は良い関係でした。
そこで英治は、
どうせ僕はもうすぐ死ぬ。ここはいっそ僕がピエロになろう。
お前は僕の分まで出世してくれ。
引用元:新川帆立『元彼の遺言状』宝島社文庫
と、自分が泥をかぶるという選択をしたのでした。
すべては病床の英治の奇行のせいであり、それに巻き込まれた拓未は致し方なく、
ゲノムゼット社の自分の持分も国庫に渡すことになった。
引用元:新川帆立『元彼の遺言状』宝島社文庫
という筋書きにしたのでした。
【理由3】会社役員や森川家の動きを封じるため
「犯人に全財産を譲る」
「犯人はどんどん名乗り出てほしい」
「役員3人が、犯人選考会を開く」
と遺言したのは、役員たちの動きを封じるためでした。
というのも、株式が国庫に入るまでの3カ月間に、拓未が官公庁で根回しに動くと、役員が怪しむからです。
原作小説では、森川製薬を立て直すために、他社から副社長に就任した、キレ者の平井副社長がいます。
拓未が、平井副社長に怪しまれずに裏工作できるよう、マスコミの力を利用したのでした。
「犯人は名乗り出て」という珍妙な遺言に、マスコミは反応して、
「どんな犯人選考会が開かれるのか?」と役員を追いかけまわします。
また、森川家では「拓未と英治はライバル」と思っていました。
そのため、英治が死ぬと、森川家でも拓未が疑われて、みんなが拓未の行動を気にするでしょう。
会社役員や森川家の意識を、拓未からそらすために、面倒な遺産相続の手続きに会社や親族を巻き込んだのでした。
英治が残した奇妙キテレツな遺言状には、実は切実で深い理由があったのですね。
\こちらもドラマ原作/
【元彼の遺言状】英治が犯人に遺産相続した理由まとめ
英治が犯人に遺産相続しようとした理由は3つ
- ゲノムゼット社の株式を国庫に帰属させるため
- 拓未のキャリアを守るため
- 会社役員や森川家の意識を逸らし、動きを封じ込めるため