映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』には、人間と魔物が混在して暮らす世界が描かれてします。
主人公の一色正和の家のお手伝いさん・キンは、謎めいたところがありますね。
この記事では、
キンはどういう人なのか(年齢など)
キンが、甲滝五四郎の黄泉の住所を知っていたのは何故か?
について考察をしています。
ネタバレを含みますので、これから映画をご覧になる方はご注意ください。
映画『鎌倉ものがたり』のキンの正体は142歳の人間!
映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』には、大河原キンという家政婦さんがいます。
映画の中では、一色正和と妻・亜紀子の会話から
一色正和の祖父の代から家政婦
夫を日露戦争で亡くした
自称年齢85歳
ということが明らかにされています。
年齢はかるく百歳を超えてるのではないかと、亜紀子が言っていました。
魔物も人間たちと普通に暮らしている鎌倉だと、「キンの正体は魔物では?」と思ってしまいますね。
原作の漫画では、キンは次のように描かれています。
一色正和の祖父の代から家政婦
夫を日清戦争で亡くした
自称年齢82歳
本当の年齢は142歳
健康で体力も亜紀子よりある
幽霊が見える
魔物の知り合いが多い
鎌倉の郊外在住
キンは魔物ではなく、「142歳の人間」だそうです。
かなり長生きですね!
そのため、魔物の知り合いも多いとのこと。
映画の中でも、「魔界マツタケ」を知ってましたし、うっかり食べてしまった時は、背中を叩いて霊体を肉体に戻す方法を知っていました。
魔物関係の知識も豊富なようです。
映画『鎌倉ものがたり』でキンが黄泉の住所を知ってた理由はなぜ?
映画の中盤で、主人公の一色正和が、妻の亜紀子を連れ戻すために、黄泉の国へ行くとキンに話す場面があります。
するとキンは正和に、甲滝五四郎の黄泉の国の住所を書いたメモを渡します。
どうしてキンは、甲滝五四郎の黄泉の住所を知っていたのでしょう?
ネット上に見る従来の解釈は、論理的に整合しないところがあったので、新解釈をたててみました。
両方を紹介します。
ネット上の解釈:父親は鎌倉と黄泉を行き来していたから
ネットにある従来の解釈はどれも、
- 「甲滝五四郎は、現世と黄泉を行き来していた」
- 「甲滝五四郎が黄泉から帰ってきて、自分で住所を知らせた」
という内容です。
従来の解釈が成り立たない理由
個人的には、この解釈には少し無理があると思います。
理由は2つです。
理由1:「あっちへ行って帰ってきた者はおりません」というキンの言葉
まず、「黄泉へ行く」と言った正和に、キンは「あっちへ行って帰ってきた者はおりません」と明言しています。
この言葉から分かるのは、
甲滝五四郎は、黄泉の国から現世へ戻ってきたことがない
黄泉の国へ行った(生きた)人間は、複数いる
ということです。
普通、黄泉へ行った人間が一人なら、「Aさんは、黄泉の国へ行ったきり、帰って来なかった」というような言い方をします。
タキの言い方だと、「あっちへ行った人間は何人もいたが、帰ってきた者は一人もいない」というニュアンスになります。
これは裏を返せば、「行き方を知っている人間はいるが、帰り方を知ってる者はいない」ということでもありますね。
理由2:『反魂奇譚』に帰り方が書かれていないから
二つ目の理由は、『反魂奇譚』に帰り方が書かれていないからです。
もし甲滝五四郎が、現世と黄泉を何度も行き来していたのなら、『反魂奇譚』に帰り方まで書くはずです。
書いていないのは、帰り方を知らなかったからです。
以上、2つの理由から、「甲滝五四郎が黄泉から帰ってきて、キンに住所を教えた」という解釈には無理があると考えます。
新解釈:魔物か死神がキンに住所を伝えたから
それでは、甲滝五四郎は、どのようにしてキンに黄泉の住所を知らせたのでしょう。
甲滝五四郎は、黄泉の住所をかいたメモをキンに渡すよう、魔物か死神に頼んだのではないでしょうか。
映画の中で、現世と黄泉を行き来しているのは、「死神」と「魔物」だけです。
死神は仕事で、行き来してますね。
また、鎌倉の夜市で亜紀子にマツタケを売った魔物は、黄泉の天頭鬼の館にもいました。
ということは、魔物は現世と黄泉を、電車を使わずに行き来していることになります。
死神と魔物のどちらかに頼むしか、キンに住所を知らせる方法はなかったはずです。
死神は、生きてる人間には基本的には見えません(死にかけると見える)。
でも、キンは幽霊が見える人間なので、死神が見えるかもしれませんね。。
また、キンは魔物にも知り合いが多くいます。
甲滝五四郎の死後を心配したキンが、知り合いの魔物に頼んで様子を見に行ってもらったという可能性もありますよね。
そこで甲滝五四郎が「キンが亡くなって黄泉に来る時は、遊びに来てくれ」という感じで住所を知らせたかもしれません。
話を整理しましょう。
個人的には、2パターンで推測しています。
(1)甲滝五四郎は、次のいずれかで黄泉へ行く方法を知り、小説に書く
・一色正和と同じように魔界マツタケで幽体離脱し、黄泉へ渡る方法を知る
・これまでに黄泉へ行ったという人の噂などから、方法を知る
(2)甲滝五四郎が、黄泉へ行く
・キンは黄泉への行き方を知らなかった→甲滝はキンには相談していないらしいと分かる
・しかし戻るために体は必要→火葬は待つよう、書き置きでキンに頼んだ可能性あり
(3)妻・絵美子を連れて現世に帰れないと、甲滝が知る
ここまでは2パターンとも共通ですね。
まず魔物パターンです。
(4)帰って来ない甲滝を心配して、キンが知り合いの魔物に、黄泉に様子を見に行ってもらう
(5)甲滝が魔物に、黄泉の住所のメモを託す
次は、死神パターンです。
(4)生きた人間が黄泉に来るという珍しい案件のため、死神局が対応
(5)甲滝が死神にキンへの伝言を頼んだ
・黄泉の住所
・甲滝の遺体の火葬
このような流れで、キンは甲滝の黄泉の住所を知ったのではないかと考えています。
どちらかというと、魔物パターンの方が無理がないかな、と思います。
ちなみ補足すると、実は「幽霊の甲滝が自分で知らせた」という可能性が無きにしもあらずです。
しかし、つじつまが合わなくなるんですね。
正和が亜紀子を連れて駅に逃げた時、駅員に現世行きの電車の時間を尋ねるシーンがあります。
駅員は、現世行きの電車はないことを告げ、「覆水盆に返らず。でもお盆には帰るか」とシャレのようなことを言います。
これが冗談でなければ、黄泉の人間は「お盆には現世に帰る」ということですね。
すると、「甲滝五四郎が、お盆に鎌倉に帰って住所を知らせたのでは?」と思えますよね。
キンは幽霊が見えますから。
しかしそれならば、甲滝は黄泉への行き方も含め、いきさつなどを詳しくキンに話したはずです。
それに毎年、お盆には帰って来られることになります。
また、キンの「あっちへ行って、帰ってきた者はいない」という言葉が、あいまいになってしまいます。
ということで、「幽霊の甲滝が知らせた」説は、除外しました。
映画『鎌倉ものがたり』のキンの正体と黄泉の住所を知ってた理由まとめ
黄泉の国へ、夫が妻を連れ戻しに行くという話は、古事記にもギリシャ神話にもありますが、どちらも失敗して大変な目にあっています。
『DESTINY 鎌倉ものがたり』では、ちゃんと現世に帰って来られて良かったですね。
この記事のポイントは
- キンは142歳の人間
- キンが甲滝五四郎の黄泉の住所を知っている理由は、死神か魔物が知らせてくれたから
です。
ちなみに、『DESTINY 鎌倉ものがたり』はジブリ映画『千と千尋の神隠し』に、とてもよく似てますよね。
そちらについても考察したので、良かったら参考にしてみてください。