実写映画『ピーターラビット』を観て、「原作の絵本も、こんな感じなの?」と思った人は多いのではないでしょうか。
50年近く前から絵本があるので、「子どもの頃読んだ絵本と、なんか違う」と思ったかもしれませんね。
動物が狂暴で、トーマスがこてんぱんにやられるので、「ひどい」「つまらない」「不快」という感想もSNSで結構見かけます。
実は、映画と原作絵本では、内容がだいぶ異なっているのです。
絵本のファンほど、映画を観てショックを受けたかもしれませんね。
この記事では
『ピーターラビット』の映画と原作絵本の違い
について、解説します。
【ピーターラビット】映画と原作の違いは?
映画『ピーターラビット』は、同名の絵本を原作とした実写映画です。
絵本は世界中で大人気で、日本でもシリーズ化され、21作品が翻訳されています。
絵本を読んだことがある人は気づいたでしょうが、『ピーターラビット』は映画と絵本で、内容がかなり異なりますよね。
映画と原作絵本の同じところ
映画『ピーターラビット』の内容は、原作絵本だと1冊目の『ピーターラビットのおはなし』がベースになっています。
映画と原作の同じところは、次のような点です。
- 舞台がイギリスの湖水地方
- ピーターには3匹の妹がいて、ベンジャミンとはいとこ
- ピーターの父親は、マクレガーさんにパイにされた
- ピーターがマクレガーさんの庭に忍び込み、追いかけられる
- ピーターが青いシャツを取り返しに行く
何せ絵本なので、物語自体がとても短いんですね。
そのため、映画では多くのストーリーを創作して盛り込んでおり、絵本にはない内容がほとんど。
物語の「大枠」に当たる部分くらいしか、共通点がないです。
映画と原作の違うところ
逆に、映画と原作の違うところは多々あります。
ほとんどが、映画オリジナルストーリーと考えても良さそうです。
違うところを、箇条書きしてみました
- ピーターの性格が少し違う
- 原作では、お母さんは生きている
- 三姉妹はいい子で、マクレガーさんの庭に行かない
- 原作では、三姉妹の服はみんな赤
- 原作のベンジャミンは、垂れ耳ではない
- マクレガーさんは死なない
- マクレガーさんの奥さんも生きてる
- ビアやトーマスは登場しない
- 森の仲間みんなで、マクレガーさんの家や庭を荒らすことはない
ビアやトーマスは、映画だけに登場するキャラクターです。
映画のメインストーリーは、トーマスとピーターたちの全面戦争なので、ほとんどが原作にない話ということになります。
原作絵本は、「悪役の動物がこらしめられる」という寓話になっているものもありますが、映画ほど激しくありません。
なので、絵本を読んだことのある人は、映画を観ると結構ビックリですよね。
【キャラクター別】原作と映画の違いを解説
SNSを見ると、映画は「ひどい」「つまらない」「不快」「うざい」「嫌い」と厳しい感想を目にします。
絵本で人気のピーターラビットが、映画で酷評される理由は何でしょう?
キャラクターの性格が、あまりにも変えられてしまったからではないかと思います。
子どもの頃に絵本で読んで長年のファンほど、原作のかわいいイメージが壊されて、がっかりしてしまうのでしょう。
ピーターたちうさぎ5匹が並んで歩いてると、肩で風切るヤクザのように見える人もいるようです。
ピーターたち動物が、人間と庭をめぐって「仁義なき戦い」を繰り広げてるようにも見えますものね。
ピーターたちが「ニヤリ」と笑うのを見て、「ピーターはそんな顔しない」と正直思いましたし、ショックでした。
キャラクターそれぞれが、原作と映画でどう違うのか、くわしく見てみましょう。
ピーターラビット
主人公のピーターラビットは、映画だとかなり反骨精神の強く、知恵がまわる好戦的なうさぎに思えますね。
原作だと、
- お母さんの言うことを聞かない
- やんちゃで、服や靴をしょっちゅう失くす
- 怖いと泣くこともある
という姿が描かれています。
自分からマクレガーさんを襲撃したりしないのです。
なので、映画のピーターのような「けんかっ早い」「狂暴」という感じはありませんね。
「ものをよく考えないので、マクレガーさんに追いかけられる」という印象です。
また、原作では、ピーターは自分のキャベツ畑を持っているんですね。
なので、映画を観ると「そんなに毎日マクレガーさんの庭に行かなくても」と、ちょっと思います。
キャベツが獲れる時期ではなかったのかもしれませんが。
マクレガーおじさん
マクレガーおじさんは、原作でもピーターの天敵です。
けれど、原作絵本の中で死んだりしません。
ピーターを追いかけまわした後、心臓発作で死んだら、子どもは絵本を読んで驚きそうですよね。
上のツイートは、マクレガーさんを演じたサム・ニール本人のアカウントです。
「マクレガーさんが死んだのも、2作目に出られないのもピーターのせいだ」
「ピーターは殺人犯だ!」
とつぶやいています。
ブラックユーモアが効いてて、おもしろいですね。
原作のマクレガーさんは夫婦で暮らしていますが、口喧嘩するので「仲睦まじい」とは言い難い感じです。
ビアとトーマス
原作絵本には、トーマスやビアは登場しません。
トーマスとビアは、完全に映画オリジナルのキャラクターです。
ちなみに、ビアというのは、原作者のビアトリクス・ポターの名前。
絵が上手いことや、森の動物と親しいということからも、ビアのモデルはビアトリクス・ポターだと分かります。
けれど映画のビアと原作者の共通点は、それくらいです。
実際のビアトリクス・ポターは、抽象画ではなく、動物の絵を描くのが得意でした。
だから『ピーターラビット』という絵本が生まれたんですね。
ピーターのお母さん
ピーターのお母さんうさぎは、原作絵本ではちゃんと生きています。
うさぎの毛で編み物をしたり、うさぎたばこを売って生計をたてています。
うさぎたばこというのは、ラベンダーを乾燥させたもので、人間のたばことはだいぶ違います。
お店を経営するしっかり者のお母さんです。
ピーターの妹たち
ピーターの妹うさぎたちは、モプシー・フロプシー・カトンテールの三姉妹。
原作絵本では母親の言いつけを守る、いい子たちです。
母子家庭なので、お母さんを気遣っているのかもしれませんね。
なので、ピーターのようにマクレガーさんの庭に行ってません。
絵本だと、大人しいうさぎなのです。
映画では
- パチンコの特訓をしてトーマスを襲う
- モプシーとフロプシーで、マウントしあう
など、かなりおてんばで、我が強い感じさえしましたね。
映画が「お母さんが死んだ後の話」で、「お母さんが死んだ後、三姉妹は人が変わった」という設定の可能性もありえます。
けれど、娘たちまで言いつけを守らなくなったと知ったら、お母さんはショックでしょうね。
あと、原作では三姉妹はみんなおそろいの赤い服を着ています。
映画では、観て区別できるように、シャツの色を変えてありましたね。
ベンジャミン
BTW Peter Rabbit x Benjamin Bunny incest OTP pic.twitter.com/boPRgmoy6t
— Lando (@Rurijian) June 15, 2018
原作絵本と、それほどイメージが変わらないのは、ベンジャミン。
ベンジャミンは、「いとこだけど兄弟でない」という感じを出したかったのか、映画では垂れ耳でした。
しかし原作では、ピーターたちと同じように耳は立っています。
ちなみに原作の3巻『フロプシーのこどもたち』で、ベンジャミンは、フロプシーと結婚して、子どもが6匹生まれるのです。
そして子どもたちが、マクレガーさんのレタスをたらふく食べて、捕まってしまうという大事件が発生。
ベンジャミンとフロプシーが、ねずみに助けてもらいながら救出劇を繰り広げます。
さらには13巻『キツネどんのおはなし』で、子うさぎたちがアナグマにさらわれて、食べられそうになるという事件も起きます。
ベンジャミンとピーターが、何とか助け出して事なきを得るのです。
親になったベンジャミンとフロプシーは、やんちゃな子どもたちに手を焼いて、結構苦労しています。
ちなみに、ベンジャミンのモデルとなったうさぎは、ビアトリクス・ポターが飼っていた「ベンジャミン」といううさぎです。
モデルになったうさぎの種類は、ネザーランドドワーフと一般的に言われていますが、本当は違います。
「ピーターラビット」という品種の方が、映画や絵本のピーターラビットに近いです。
詳細については、別の記事の「ピーターラビットのトリビア」の章にまとめましたので、ご参照ください。
実写映画『ピーターラビット』登場人物相関図&家系図!声優や簡単あらすじも解説
森の仲間たち
森の動物たちが、みんなでマクレガーさんの庭に押しかけて、家を荒らすというのは、原作にはありません。
映画のオリジナルストーリーです。
映画に登場する森の仲間たちは、おおむね原作絵本にも登場します。
- キツネの「ミスター・トッド」
- ブタの「ピグリン・ブランド」
- ハリネズミの「ティギーおばさん」
- カエルの「ジェレミー・フィッシャー」
- 町ねずみの「ジョニー」
- あひるの「ジマイマ・パドルダック」
これらの登場人物は、原作ではそれぞれ自分が主人公になる物語を持っています。
ただ、原作とは性格が違うキャラクターもいましたね。
一番性格が違う印象だったのは、ハリネズミのティギーおばさん。
原作では、洗濯物屋さんを営んでいて、森の仲間たちの服を洗濯・糊づけし、配達までしています。
人間の子どもが落としたハンカチを拾って、きちんと洗濯してアイロンまでかけてあげる、親切なおばさんなのです。
なので、映画で「死んでも悔いはない」と言って、電圧線のピーナッツバターをなめるのは、だいぶ違うイメージでした。
感電して体のハリが飛び散るのも、ちょっとショックでしたね。
ブタのピグリン・ブランドは、食いしん坊ではありますが、原作ではしっかり者です。
「ダイエットは明日から」みたいないい加減な印象はなかったので、「あれ?」と思いました。
原作に登場しないのは、イクメン雄鶏のJWルースター2世。
映画のオリジナルキャラクターですが、2作目の『ピーターラビット バーナバスの誘惑』にも登場します。
森の仲間のそれぞれの性格などについては、別の記事の「登場人物解説」でくわしくまとめていますので、ご参照ください。
実写映画『ピーターラビット』登場人物相関図&家系図!声優や簡単あらすじも解説
【ピーターラビット】映画と原作の違いまとめ
- 映画は原作絵本の1作目『ピーターラビットのおはなし』がベース
- 映画と絵本では、内容が大きく異なっている
- ビアとトーマスは、映画のオリジナルキャラクター
- マクレガーおじさんは、原作では死なない
- うさぎの三姉妹は、原作ではいい子で、マクレガーさんを襲撃しない
というのが、この記事のまとめです。