映画『サマーウォーズ』には、陣内一族が26人登場します。
長野県上田市に本家がある、武田信玄の家臣の末裔という設定。
16代当主の栄おばあちゃんの誕生日祝いで、一族が集まります。
終盤では、一族のアカウントを賭けて、夏希がラブマシーンと闘う場面も。
「家族」が大きなテーマになっているのは間違いありません。
しかし、SNSでは「家族が気持ち悪い」との声が多く上がっています。
この記事では、
- 『サマーウォーズ』の家族が、気持ち悪い理由は?
- なぜ大家族で、世界のために戦うの?
について、まとめました。
サマーウォーズの家族は、なぜ気持ち悪い?
映画『サマーウォーズ』は、登場人物のほとんどが陣内一族です。
90歳の栄から、乳飲み子まで26人が登場するので、やたらにぎやか。
室町時代から続く武田信玄の家臣の家系で、地方の名家。
代々受け継がれている家訓もあり、核家族が多い現代ではちょっと珍しい設定です。
SNSでは、「家族が気持ち悪い」という声が、結構たくさんあがっています。
どの辺りが「気持ち悪い」のか、理由を見てみましょう。
陣内家の家系図と登場人物の紹介は、別の記事にくわしくまとめていますので、ご参照ください。
田舎と大家族の愛と絆を賛美しすぎ?
陣内家の家族が「気持ち悪い」理由として、「田舎や大家族を美化しすぎ」という声が多くありました。
陣内家は、栄おばあちゃんを要として、一族が束ねられている印象がありますね。
栄おばあちゃんが一族に言っているのは、次のことでした。
- 人の役に立ちなさい
- お腹がすいていることと、一人でいることが一番良くない
他にも、陣内家の価値観として
陣内家の男は、強くなければいけない
というのもありました。
「男だから」「女だから」というのに、抵抗を感じる人は多そうですね。
陣内家というのは良くも悪くも、「昭和時代の田舎の親戚の集まり」という感じがあります。
恐らく、細田監督は、自分が子どもの頃から接していた「親戚づきあい」を、そのまま描いたのではないでしょうか。
核家族でかぎっ子の健二が、「ここに来て、すごく楽しかったです」と栄に言う場面がありました。
なので、確かに大家族や田舎を賛美してるように見えますね。
けれど
- 台所では、女性同士の小競り合い
- 侘助は、財産を持ち逃げした愛人の子として、嫌われている
- 長女の万里子は、次男の万助を役立たず扱い
など、「仲のいい一族」「美しい人間関係」とは言い難いところも見えます。
「大家族の影の部分」も、しっかり描かれていました。
侘助は「帰って来るんじゃなかった」と悔やみ、健二とは正反対のセリフを言います。
どの立場に立つかによって、陣内家の見え方は180度変わってしまうんですね。
個人的には、「小さい頃は、いとこたちと遊べるから、夏休みが楽しかったなあ」と懐かしい気持ちになります。
一方で、大人の立場にたつと「嫁の立場では行きたくないな」とも思います。
昭和の田舎はプライバシーも何もないので、万作みたいなセクハラオヤジがいると思うと、女性は気持ち悪いですよね。
細田監督は、「昭和の田舎の大家族」が割と好きなのでしょう。
ありのままをリアルに描きすぎて、時代に合わないところもあるなあと思います。
令和の若い世代だと、親も兄弟が少ないし、昭和の大家族は違和感が強いかもしれませんね。
女性ばかりが働かされている?
細田監督は、映画が公開されるたびに「女性観が古臭い」と指摘されています。
『サマーウォーズ』も、女性ばかりが台所で働いていることに、違和感をもつ人が多いようです。
どうして女性ばかりが働いているのか、かんたん家系図を見てみましょう。
栄は、大正9年生まれで90歳。
本家を取り仕切る万里子は71歳(昭和14年生まれ)。
次男の万助は70歳で、万作は68歳で、どちらも戦前生まれ。
戦前生まれで70ちかい男は、そりゃあもう何もしないですよね。
その子供たち(栄の孫)の世代は40代です。
この世代の男性は、太助以外は公務員。
OZの大混乱もあり、みんな「帰れない」というくらい働いています。
この世代の女性たちは、夏季休暇で本家に集まり、台所で小競り合いつつ働いてるんですね。
これも良くも悪くも昭和っぽい感じ。
25人分の食事を用意するのだから、大変。
由美さんは息子の野球の試合もろくに見られず、ちょっとかわいそうでしたね。
今ならたぶん、お寿司やオードブルを注文するのでしょうが。
そこら辺も、特に女性からブーイングが上がるのでしょう。
なぜ大家族が登場して、みんなで闘うの?
陣内万助さんの声を演じたのは2014年に亡くなった永井一郎さんです。まさに「日本のお父さん」ですぅー #万助 #サマーウォーズ #よろしくおねがいしまぁぁぁす pic.twitter.com/gd2WCY6ODp
— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) August 18, 2017
細田監督は、「登場人物が成長する物語」を毎回描きます。
『サマーウォーズ』も、健二や夏希、カズマが大きく変わりますよね。
けれど、なぜ大家族が登場し、みんなで世界のために戦わなきゃいけないのでしょうか?
それは、「陣内家は、武田信玄の家臣の末裔」だからです。
戦国時代、武将の家臣が闘うとなると、一族郎党で闘うわけですね。
人数が多くないと、戦の雰囲気が出ません。
600年経った現代でも、子どもや男性が中心となってラブマシーンと闘います。
一方で女性陣は、万里子がグチをこぼしつつ、お葬式の準備にいそしんでいたのが、リアルでしたね。
親戚一同力を合わせて戦う機会なんて、現代ではちょっと思いつかないですよね。
そういう意味では、斬新なアイデアだったとも言えそうです。
ただ、観る側は体験したことがないので、「家族の絆を押し付けられてる感じ」がして、嫌だった人も多そう。
細田監督としては、自分が体験した「昭和の古き良き田舎」を表現したのでしょう。
しかし、令和となった今では「良く見えない」と感じる人が多いのだと思います。
これからの日本は、どんどん人口が減っていきます。
令和の次の時代には、『サマーウォーズ』をまた違った視点で見るようになるかもしれませんね。
U-NEXTでは、細田守監督の以下の作品が視聴できます。
- 『時をかける少女』
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- 『おおかみこどもの雨と雪』
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※本ページの情報は2021年7月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
★分かりにくい陣内家を、家系図で分かりやすく図解!★長男から三男までの4つの家系ごとに、登場人物を紹介
★侘助は誰の子?家系図で解説!★侘助はなぜ陣内家に引き取られた?
★侘助がかっこいい理由★侘助は悪くないのに責められてかわいそう?なぜ親戚一同怒った?
★カズマはなぜ万助を師匠と呼ぶ?★万助はカズマの祖父だった
★夏希を嫌う人が多い理由は?★夏希は、栄から侘助のことを頼まれていた!★細田監督のヒロインは嫌われやすい?
サマーウォーズの家族が気持ち悪い理由まとめ
- 細田監督は、昭和の田舎の大家族を、良くも悪くもリアルに描いている
- どの登場人物の視点に立つかで、大家族の見え方は変わる
- 細田監督は、昭和の田舎の大家族像に肯定的と思われる
- 昭和とは「良き家族像」が変わってしまったため、「気持ち悪い」と感じる人が多い