映画『君の膵臓をたべたい』の桜

『君の膵臓を食べたい』では、ヒロイン桜良が通り魔に刺されて死にます。

膵臓の病気で1年後に死ぬと思っていて、驚いた人は多いのではないでしょうか。

「なぜ通り魔に殺される展開にしたの?」「通り魔を出す必然性は?」と不思議に思いますよね。

理由を考察してみて、理由は2つあると思いました。

この記事では、

  • 通り魔の伏線は?
  • 桜良が病気で死なず、通り魔に殺された理由

について、『世界の中心で愛を叫ぶ』の比較も交えながら、解説します。

【君の膵臓をたべたい】通り魔に殺された理由は2つ!作者の意図を分かりやすく解説!

映画『君の膵臓をたべたい』では、ヒロイン桜良が、通り魔に殺されるという結末を迎えます。

多くの人が「最後はヒロインが、膵臓の病気で死ぬ」と予想していたはず。

その予想を大きく裏切る展開でした。

「なぜ病気で死なず、通り魔に殺されたの?」

「通り魔に殺されなければいけなかった必然性は?」

と思った人も多かったでしょう。

  • そもそも伏線はどこだったのか?
  • なぜラストで通り魔に殺されたたのか?

について、解説します。

通り魔の伏線はどこだった?

劇中、通り魔の伏線はあったのですが、さりげなかったので気づかなかった人も多いでしょう。

アニメ版だと映画前半、春樹が帰宅した時に、母親がテレビニュースを見ていました。

そのニュース内容が、通り魔殺人事件だったのです。

映画に出てくるニュースは、その後の伏線として使われることが多いので、勘のいい人は「誰か死ぬな」とピンときたでしょう。

小説ではもっと踏み込んでいて、桜良と春樹がニュースの内容について話すシーンがありました。

  • 伏線は、作品の前半にひく
  • 殺人犯は、早目に登場させる

というのは、小説・映画の鉄則。

『キミスイ』の伏線は、ちょっとだけだったので気づかず、ヒロインの突然の死に驚いた人も多いのではないでしょうか。

通り魔に殺された理由1=メッセージの強調

桜良は、膵臓の病気で1年後には死ぬことが予想されていました。

しかし退院した途端、通り魔に襲われて突然亡くなります。

短かった寿命は、予想以上に短くなってしまったのです。

この展開により、作者が言いたかったことが、より強調されました

小説から、春樹の気持ちを引用してみましょう。

甘えていた。
この期に及んで僕はまだ甘えていたんだ。

彼女に残されていた一年という時間に甘えていた。
ひょっとすると彼女ですら、そうだったのかもしれない。

少なくとも僕は、誰しもの明日が保証されていないという事実をはきちがえていた。

僕は、残り時間の少ない彼女には明日があるものだと当然のように思っていた。

引用:住野よる『君の膵臓をたべたい』

映画冒頭から、人の命は明日をも知れないということが、繰り返し言われています。

病気の桜良より春樹の方が先に死ぬ可能性は、十分ありますよね。

以前、交通事故の現場に居合わせたことがあります。

当事者たちは、10秒前には事故を起こすとは想像していなかっただろうと思いました。

場合によっては即死するわけですから、人が突然死ぬ可能性は誰にもあるわけです。

アニメ版だと、映画冒頭で桜良は

「1日の価値は全部一緒なんだから、何をしたかで私の今日の価値は変わらない。
 私はこうやって普通のことをしてるのが楽しいの」

と言って、普通の毎日を大切に生きていました。

小説だと桜良は

「死に直面してよかったことといえば、それだね。毎日、生きてるって思って生きるようになった」

と言っています。

  • 人はいつ死ぬか分からない
  • 今日、生きていることは当たり前じゃない
  • 毎日を大切に生きる

というのは、多くの小説・映画で言われていることです。

病気で亡くなると思っていた桜良が、通り魔に殺されることで、さらに強調されています。

通り魔に殺された理由2=類似作品と差をつけるため

桜良が通り魔に刺されて死ぬのは、「類似作品と差をつけるため」というのが一番大きな理由だと思います。

「ヒロインが病気で死ぬ」という王道ストーリーは、小説や映画ドラマは、昔からいくらでもあります。

ここ20年くらいで記憶に残るヒット作は

  • 『世界の中心で愛を叫ぶ』
  • 1リットルの涙』
  • 『神様もう少しだけ』

などではないでしょうか。

多くの人が「ヒロインが死ぬ、いつもの泣けるアレね」と思いますよね。

あまりに予定調和なので、「ヒロインが病気で死ぬ」という背骨は残して、設定を多少変えるのがセオリーです。

小説も映画もドラマも、常に何かしら「新しさ」が求められます。

同じものを2回やる意味が無いからです。

小説を読んで、住野よるさんは作家ということもあり、特に『世界の中心で愛を叫ぶ』を意識したと思われます。

というのも、小説の最後のほうにこんなくだりがあるからです。

「春樹です。志賀春樹、といいます」

「あら、そんな小説家いるわよね?」

引用:住野よる『君の膵臓をたべたい』

これはもちろん、志賀直哉と村上春樹さんの名前を掛け合わせているんですね。

そして『世界の中心で愛を叫ぶ』の主人公の名前は、松本朔太郎でした。

詩人の萩原朔太郎に由来しています。

さらには、同級生の大木龍之介は、芥川龍之介にちなんでいるのです。

作者が『世界の中心で愛を叫ぶ』を意識して書きました、とタネ明かししているように感じます。

『世界の中心で愛を叫ぶ』は、小説も映画も大ヒットしました。

しかし、同じような設定にすると面白くありませんから、とにかく違いや差をつけなければいけません。

「いかに新しくするか」は、作者の腕の見せ所なのですね。

『世界の中心で愛を叫ぶ』との違い
  • 桜良と春樹は、恋人同士ではない
  • 桜良は、白血病ではない
  • 桜良は、通り魔に殺される
  • 主人公・春樹が、桜良の死後に大きく成長

という設定にしたのでしょう。

「通り魔に殺される」というのは、「起承転結」の「転」ですが、実に鮮やかでしたね。

小説や映画などでは、「新しさ」とは往々にして「読者や視聴者を、(いい意味で)裏切る」ことなのです。

住野よるさんの試みは、非常にうまくいっていると思います。

年間100冊以上の本を読んでいますが、こういう展開は読んだことが無いからです。

実に新しいと言えるでしょう。

また、恋人に死なれて残された方が、悲しみに沈み思い出を偲ぶという結末になりがち。

けれど、春樹は恋人ではなかったため、

  • 桜良のようになると決意
  • 桜良の思いを汲んで、恭子と仲良くなる

という成長ぶりを見せます。

これも、ありそうでなかなか無い展開と言えるでしょう。

そのため、ただ悲しいだけの物語に終わっておらず、清々しさが残るのです。

ちなみに「起承転結」の「転」が鮮やかな作品としては、他に『スタンド・バイ・ミー』があります。

こちらの記事で、詳しく書いているのでご参照ください。


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【君の膵臓をたべたい】通り魔に殺された理由まとめ

  • 桜良が、病気ではなく通り魔に刺されて死んだのは、2つ理由がある
  • 「人の命は明日を知れない」「毎日を大切に生きる」というメッセージの強調
  • 他の類似作品と違いや差をつけるため
  • 主人公・志賀春樹の名前から、作者は特に『世界の中心で愛を叫ぶ』を意識していると推測できる

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