映画『バケモノの子』では、後半で一郎彦が巨大なクジラに姿を変えます。
「どうして一郎彦はクジラになったの?」「クジラの意味は何?」と思った人も多いのではないでしょうか。
伏線は、映画に出てきた小説『白鯨』です。
けれど、映画の九太と一郎彦は、小説『白鯨』とは全く違う展開と結末を迎えました。
この記事では、
- 一郎彦がクジラになった理由や意味は?
- 小説『白鯨』は、どんな小説?
- 監督が伝えたかったことは?
- 漫画『ONE PIECE』も『白鯨』と関係してる
について、まとめています。
【バケモノの子】一郎彦がクジラになった理由や意味は?
映画『バケモノの子』では、後半で一郎彦が闇に飲まれてしまいます。
父を想うあまり、猪王山に勝った熊徹を許せず、念力を使って刀で刺し殺そうとしましたね。
更には、九太を追いかけて渋谷で対決。
渋谷の街には、大きなクジラの影が現れます。
闇落ちした一郎彦=大きなクジラの影
と表現されているわけですね。
「一郎彦はなぜクジラになったの?」「クジラの意味は?」について、解説をまとめました。
クジラの意味は小説『白鯨』と関連してる
一郎彦がクジラになる前、伏線として以下の場面で「クジラ」が登場しました。
- 母親が死んで引っ越しの荷物に、『白クジラ』の本があった
- 楓と出会った図書館で、九太は『白鯨』を読んでいた
九太は子どもの頃に『白クジラ』を読んでた
引っ越しシーンで出てきた『白クジラ』という本は、『白鯨』の児童向けに編集された本ということなのだろうと思います。
わたしも少年少女文学全集で『白鯨』を読みましたが、そのまま『白鯨』でしたね。
Amazonで調べてみましたが、やはり『白いクジラ』という本はないので、映画での創作のようです。
九太のお母さんが、まだ生きてる時に買ってくれた本なのでしょう。
小説『白鯨』のあらすじと結末は?
映画では、小説『白鯨』について楓が次のように語る場面があります。
- 「主人公は自分の片足を奪った憎いクジラに復讐しようとしている」
- 「でも実は、自分自身と戦っているんじゃないかな」
- 「つまり、クジラは自分を映す鏡」
ということは、
一郎彦の闇=巨大なクジラ=「自分を映す鏡」=九太の闇
と言えそうです。
けれど正直、『白鯨』ってそういう話だったっけ?と思ったんですよね。
主人公の船長のすさまじい執念が、やたら印象的な小説なのです。
「クジラは自分を映す鏡」という感じは、もちませんでした。
あらすじを結末まで、簡単に解説します。
- エイハブ船長は、自分の片足を食いちぎった白鯨モビー・ディックへの復讐に燃えていた
- エイハブ船長は、白鯨を追いかけるために台風を突っ切るなど、船員を危険にさらす
- 日本の沖合で、エイハブ船長はモビー・ディックを発見
- エイハブ船長は、モビー・ディックを3日間追跡
- 船員たちが、モビー・ディックに何本もモリを打ち込む
- モビー・ディックは怒り狂って大暴れし、船が大破しみんな海に投げ出される
- エイハブ船長は、自分のモリの綱が首にからまり死亡
小説では、主人公の船長は白鯨に勝てずに、死んでしまうんですよね。
『白鯨』は、いかにも欧米の古典文学といった感じで、旧約聖書にちなんだ登場人物や話が、たくさん出てきます。
小説のクジラは、聖書の「リヴァイアサン」を連想させる生き物として登場します。
「リヴァイアサン」は、巨大な水棲の幻獣で、悪魔とされているのです。
では、そこに立ち向かうエイハブ船長が「善」の象徴かというと、そういう感じはありません。
復讐心でいっぱいで、正気を失ってしまった老人として描かれています。
一郎彦は、エイハブ船長とクジラの両方のイメージなんですよね。
一郎彦がクジラになったのはなぜ?
青年になった一郎彦さんを演じたのは宮野真守さんマモさん、素敵な声ですーー「バケモノの子」テレビ初放送中 #一郎彦 #バケモノ #親子の絆 #九太 #バケモノ #マモ #宮野真守 pic.twitter.com/Ba26ocStuq
— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) July 22, 2016
小説『白鯨』では、クジラは「悪の象徴・悪魔」として描かれていると前述しました。
一郎彦は、ネガティブな感情に取りつかれたようになってしまい、自身の闇に飲み込まれてしまいます。
実際、悪魔に取りつかれたような顔になってましたね。
一郎彦の悪意が、『白鯨』のクジラと重なるイメージです。
そのため、一郎彦(の闇)は、クジラとして描かれたのでしょう。
ちなみに『白鯨』のクジラは、マッコウクジラです。
マッコウウジラは「歯のある動物」の中では、世界最大。
標準的なサイズは、オスだと16~18m。
映画で渋谷の街に現れたクジラの影も、それくらいありました。
船の下に入ったら、一発でひっくり返せそうですね。
日本では、和歌山県の紀伊半島沖や、高知県の室戸岬沖で見られることがあります。
小説『白鯨』でも、最後の戦いは日本の沖合でしたしね。
監督が伝えたかったことは?
映画『バケモノの子』のクジラのシーンで、細田守監督が伝えたかったことは何でしょうか?
個人的には、楓のセリフに現れているように思いました。
九太と楓は代々木に逃げますが、一郎彦のクジラが追いかけてきます。
楓は、一郎彦に向かってこう言いました。
「誰だって、みんな等しく闇をもってる。
蓮くんだって抱えてる!私だって!
私だって抱えたまま、今も一生懸命もがいてる。
だから、簡単に闇にのみ込まれたあなたになんか、蓮くんが負けるわけがない。
私たちが負けるわけないんだから!」
最後は、大太刀に転生した熊徹が、九太の胸の中に入ります。
九太は「胸の刀」の力で、一郎彦の闇を斬って勝つのです。
これらのことから、細田監督は
- 誰しもが心に闇を抱えている
- 飲まれないよう、もがくことが大切
- 人とのつながりや絆で、闇に打ち勝て
というメッセージを、映画に込めたのではないかと思いました。
渋天街の自宅で意識が戻った一郎彦の腕には、赤いしおり紐が結ばれていました。
もともとは、楓がお守りとして九太にあげたものです。
楓は、自分が闇に飲まれそうになったときに、何度も助けられたようです。
九太も、闘技会の会場で闇にのまれて一郎彦を殺しそうになりました。
けれど、赤い紐のお守りを見て、寸でのところで思いとどまりましたね。
一郎彦の心の闇を、自分の心の闇と同じと思っている九太は、お守りを一郎彦に譲ります。
赤い紐に込められた思いや絆が、一郎彦にもつながって、守ってくれそうですね。
小説『白鯨』は漫画『ONE PIECE』とも関係してる
今日は白ひげ海賊団船長の大海賊でグラグラの実の能力者〝白ひげ〟の誕生日
— 東京ワンピースタワー【公式】 (@onepiecetower) April 6, 2020
お誕生日おめでとうございます‼️
早く皆さんと一緒にお祝いできる日を待っています#東京ワンピースタワー #トンガリ島 #ONEPIECE pic.twitter.com/USDzNTFFn5
さて、話は変わりますが、実は大人気漫画『ONE PIECE』も、小説『白鯨』と関係しています。
「白ひげ海賊団」が乗っている船が、「モビー・ディック号」なのです。
小説『白鯨』に登場するクジラの名前ですね!
古典文学『白鯨』は、1851年に発表された作品なので、170年も昔の小説です。
でも、21世紀になっても、いろんなところで影響を与えているんですね。
U-NEXTでは、細田守監督の以下の作品が視聴できます。
- 『時をかける少女』
- 『サマーウォーズ』
- 『おおかみこどもの雨と雪』
- 『バケモノの子』
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【小説の後日談】★一郎彦のその後は?★九太と楓のその後は?
★『バケモノの子』の登場人物ネタバレ相関図★短い簡単あらすじ&結末★声優キャスト一覧
【バケモノの子】クジラの意味まとめ
- 『バケモノの子』のクジラは、小説『白鯨』の「悪の象徴」という内容が元ネタ
- クジラは、一郎彦の闇を意味している
- クジラは、「自分を映す鏡」という意味もあり、転じて九太の闇をも意味している
- クジラのシーンで、細田監督が伝えたかったのは「誰の心にも闇がある」「もがいてのみ込まれないことが大切」「人とのつながりで打ち勝つ」ということ
- 漫画『ONE PIECE』の海賊船「モビー・ディック号」は、『白鯨』のクジラの名前
というのが、この記事のまとめです。