映画『スタンドバイミー』タイトル

映画『スタンド・バイ・ミー』では、虐待されているにも関わらず、父親をとても愛しているテディ少年が登場します。

鉄くず置き場のマイロと、父親のことで激しい言い争いになりましたね。

「虐待されてるのに、どうしてそんなに父親をかばうの?」と思った人も多いでしょう。

けれど、「ノルマンディの勇士」という言葉をヒントにすると、テディの気持ちがよく分かる気がします。

この記事では、

  • テディは、なぜ父親を愛しているのか?
  • 「ノルマンディの勇士」とはどういう意味?

について、考察をまとめました。

【スタンドバイミー】テディはなぜ父親を愛してる?ノルマンディの勇士とは?

『スタンド・バイ・ミー』には、4人の少年が登場します。

中でもテディは、クリスが「20歳まで生きられないよ」と心配するほど、無鉄砲で激しいところがありますね。

そして、自分を虐待する父親を、とても尊敬し愛しています。

原作小説にはゴードンが

「わたしは不思議だった。テディはあやうく父親に殺されかけたのに、どうしてこうも父親のことをたいせつに思っていられるのか」

引用:スティーブン・キング『スタンド・バイ・ミー 恐怖の四季 秋冬編』


といぶかしがるシーンがあります。

小説でも映画でも、テディが父親を愛する理由は、明確に説明されていません。

小説や映画の場面やセリフを元に、考察してみました。

テディと父親の間で何があった?

まず、テディと父親との間に何があったのか、確認してみましょう。

映画でも「耳を焼かれた」と、虐待について触れられていますね。

小説の方が詳しく書かれているので、簡単にまとめてみました。

  • テディが8歳の時、皿を割ったことに父親が立腹
  • 父親は大きな薪ストーブの火口受けに、テディの左右の側頭を10回ずつ打ち付けた
  • 父親は、すぐに救急車を呼んだ
  • テディの悲鳴を聞いた隣人が、様子を見に訪れた
  • 父親は隣人に、ショットガンを向けて威嚇
  • 隣人が警察に通報

救急車が来てテディが病院に運び込まれると、父親は看護師たちにこう言います。

「くそったれの将校連中はこの地域一帯は異常なしと言っているが、ドイツの狙撃兵たちはいたるところにいる」

引用:スティーブン・キング『スタンド・バイ・ミー 恐怖の四季 秋冬編』


父親は、猫を撃ったり、郵便箱に火をつけたりと、行動にも異常なところがありました。

そのため、「軍人神経症」として、退役軍人の病院に入れられてしまうのです。

キャッスルロックは、人口1200人の小さな町ですから、噂はすぐ広まったでしょうね。

テディは、薪ストーブに打ちつけられたため、耳が悪くなり補聴器をつけることになったのでした。

テディは、なぜ父親を愛してるの?

父親に暴力をふるわれたテディですが、原作では父親を恨むことなく、毎週病院へお見舞いに行っています。

そして、父親がノルマンディ上陸作戦に従軍した兵士であることを、とても誇りに思っているのです。

映画でも、父親のことを「ノルマンディの勇士」と言って、尊敬していますね。

鉄くず置き場のマイロが、父親を「きちがい」などと侮辱した時は、激怒して父親をかばいました。

どうして、テディは父親をそんなにも愛しているのでしょう?

それは、「父親は、僕が嫌いで暴力をふるったわけではないから」と思っているからではないでしょうか。

つまり、テディは「父親がああなったのは、病気のせいだ」と理解しているのだと思います。

「父さんは、僕が憎くて殴ったんじゃない。病気だから殴ったんだ」ということですね。

そして、精神病になったのは、戦争体験があまりにつらかったからだと、分かっているのだと思います。

父親が「ノルマンディの勇士」と聞いて、個人的には「よく生還できたなあ」と思いました。

テディが、父親を尊敬する気持ちが、分かるような気がします。

国のために、平和のために、命がけで戦い、しかもノルマンディ上陸作戦を生き抜いたのです。

勇士と讃えられる十分な資格があると思います。

また、「そりゃあ発狂するよね」とも思います。

父親は、勇士として讃えられ、いたわられるべき人なのです。

にもかかわらず、世間やマイロが「きちがい」とバカしたり、ひどい噂を流すので、テディは怒るのです。

テディは、父親の気持ちと人生を深く理解し、守りたいと思っているのでしょう。

ちなみに原作では、クリスは次のように言ってテディをなぐさめます。

「おまえとおやじさんのあいだにあるものは、噂なんかで変わるものじゃない」

引用:スティーブン・キング『スタンド・バイ・ミー 恐怖の四季 秋冬編』

クリスは、ほんといい子ですよね。

父親はノルマンディ上陸作戦に従軍した兵士

テディの言う「ノルマンディの勇士」というのは、「第二次世界大戦のノルマンディ上陸作戦に従軍した」という意味です。

それを聞いただけでも、「よく生きて帰れたな」と思うくらいの激戦地として、よく知られています。

簡単に説明しましょう。

ノルマンディ上陸作戦とは
  • 1944年6月6日の戦い
  • 場所は、フランスのノルマンディ海岸
  • D-ディ」の作戦名で有名
  • 米・英・カナダの連合軍が、ドイツと戦闘

連合軍は、5つのビーチとオック岬から上陸し、ドイツを突破して、フランスをナチスから解放したかったのですね。

この作戦で最もよく知られているのは、オマハビーチです。

後に「ブラッディ・オマハ(血塗られたオマハ)」と呼ばれたくらい、悲惨な戦場でした。

アメリカ軍が受け持っていた戦地なのですが、兵士の半分が死んでいます

映画『プライベート・ライアン』の冒頭シーンは、このオマハビーチの「ノルマンディ上陸作戦」なのです。

トム・ハンクスやマット・デイモンが出演していましたね。

また、世界的に有名な戦場カメラマンのロバート・キャパは、このオマハビーチの戦闘を撮影しています。

これは、世界的に有名なキャパの一枚です。

これを見て「手ブレしてて下手くそな写真」と思う人がいるかもしれませんが、そうではありません。

雨あられのように銃弾が降ってくる中、船に揺られながら、命がけで撮影しているのです。

ピントを合わせる暇もないくらい、緊迫した状況で撮っているのですね。

しかも、兵士の顔が写るように撮っているということは、キャパは敵に背中を向けているのです。

オマハビーチでの戦いは、こういう状況でした。

下の写真から分かるように、丘から砲撃できるドイツ軍が、圧倒的に有利だったのです。

オマハビーチの戦い
  • アメリカ軍は、海から船で上陸
  • ドイツ軍は、丘の上から迎え撃つ形
  • 早朝に上陸作戦開始
  • さえぎるものが何もないビーチなので、米兵は片っ端から銃撃された
  • 上陸する前に、船の上で撃たれて死んだ兵士も多い
  • 米兵の血で、海が真っ赤に染まった
  • アメリカ兵は、半分が死亡
  • 昼頃にドイツ軍の弾が尽きて、米軍はようやく戦えた

映画『プライベート・ライアン』の冒頭シーンは、ノルマンディ上陸作戦を忠実に再現していると言われています。

これを見ると、戦いのすさまじさが伝わってきますよね。

この兵士の中に、テディの父親がいたと思うと、「本当に大変な思いをした人なのだなあ」と労わってあげたくなりませんか?

このような体験をすれば、PTSDになる方がむしろ自然だし、発狂してもおかしくありません

父親が勇敢に戦ったことをテディが誇りに思い、一生懸命かばう気持ちも理解できますよね。

ちなみに、『プライベート・ライアン』も、すごくおもしろい映画なので、簡単にご紹介しましょう。

これを観ると、父親をかばうテディの気持ちがよく分かると思います。

『プライベート・ライアン』とは

【あらすじ】
ライアン家の4人兄弟のうち、3人が戦死してしまいます。
残る1人のジェームズ・ライアンも、前線で従軍中でした。

米軍は、ジェームズを死なせてはならないと司令を下し、戦場から連れ戻すための作戦を実行します。
ジェームズは、一人だけ前線を離れるのは仲間を裏切るようで、葛藤するのです。

この戦場という緊迫した状況で繰り広げられる人間ドラマには、うならされてしまいます。

ジェームズ・ライアンをマット・デイモンが、ジェームズの上官をトム・ハンクスが、熱演しています。
監督がスピルバーグなので、外すことのないおもしろさで、オススメです。

ちなみにタイトルの「プライベート・ライアン」とは「ライアン一等兵」という意味です。

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テディが線路で肝試しした理由は、父親

4人が旅に出た時、テディは線路に入って「肝試し」をしました。

クリスが止めに入って、事なきを得ましたが、テディは「邪魔した」と怒っていましたね。

原作ではそれ以外にも、テディは普段からトラック相手に同じようなことをしていることが、書かれています。

テディは視力が弱いので、いつかひかれるのではないかと、ゴードンたちはいつもヒヤヒヤしていたのです。

テディはどうして、そんな無鉄砲な肝試しをしたがるのでしょう?

思うに、「父親のような勇敢な男」になりたいからではないでしょうか。

心理学的には、親を愛する子どもは、親のことを深く理解したいと願い、無意識に親と同じような生き方をします

簡単に言えば、無意識に「モデリング」してしまうのです。

ビジネスなどの場では、「成功している人のマネをする」というやり方を意識的にしますね。

父親を尊敬し愛しているテディは、自分も勇敢になりたくて、無鉄砲な行動をとってしまうのです。

そしてテディが、軍隊が好きで入隊したいのも、もちろん父親が好きだからです。

そう思うと、テディは実に愛情深い子どもだということが分かりますね。

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【スタンドバイミー】解説・考察記事一覧

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【スタンドバイミー】テディが父親を愛してる理由まとめ

映画『スタンド・バイ・ミー』では、虐待されながらも父親を尊敬しているテディが登場します。

  • テディが虐待されているにも関わらず、父親を愛しているのは「父親の暴力は、病気のせい」と理解しているから
  • 父親は、第二次世界大戦でノルマンディ上陸作戦に従軍した兵士だった
  • 父親は生還できたものの、過酷な戦場体験で精神を病んでしまっていた
  • テディは、国を守るために命がけで勇敢に戦った父親を、心から尊敬している

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