アン・ハサウェイがかわいくて、ファッションも素敵と人気の映画『プラダを着た悪魔』。
ラストの方が、話の展開が速くて、意味がよく分からないところがいくつかあります。
この記事では、
アンディが突然仕事を辞めたのはなぜ?
原作と映画でラストは違う?
についてまとめています。
『プラダを着た悪魔』の最後(ラスト)は賛否両論
『プラダを着た悪魔』は、2006年に公開されたハリウッド映画です。
日本ではこれまでに4回金曜ロードショーで地上波放送されています。
若い女性を中心に人気の映画ですが、映画のラストのあり方には賛否両論あります。
Twitterで見てみると、2対8くらいの割合で、「結末が好きではない」という人が多いようです。
全体的には好きな映画だけど、ラストだけ好きではない人たちは、どの部分が気に入らないのでしょう。
- アンディが仕事を投げ出すようにして辞めるところ
- アンディが「わたしを許して」とネイトに謝るところ
を挙げる人が多いようです。
この記事では、あんなに頑張っていた仕事を、アンディはどうして突然やめたのかについて解説します。
「最後のシーンでミランダが笑った理由」や、「アンディとネイトはよりを戻したのか」については、こちらをご参照ください。
【プラダを着た悪魔・解説】アンディが突然仕事を辞めた理由は?
主人公のアンディは、ジャーナリスト志望のニューヨーカー。
スタンフォードの法科大学院の進学を蹴ってまで、ジャーナリズムの世界で働きたいと思っていました。
そんなアンディがハイファッション雑誌「ランウェイ」で働くことにしたのは、この職場で仕事をすれば、どこででもやっていけると言われたから。
頑張って、毎日無茶ぶりを発揮する編集長ミランダにも認められるようになっていきます。
ラストの方では、
・ミランダの離婚にいたく同情
・編集長を下ろされることを、大急ぎでミランダに知らせようとする
など、アンディはミランダの「忠実な部下」という感じになっています。
では「どうして」「あのタイミングで」アンディは、ミランダの元を去ったのでしょう?
まず理由について考えてみましょう。
ヒントは、タクシーの中での二人の会話。
少し丁寧に見ていきましょう。
ミランダが、ホルトのパートナーの仕事を、内定していたナイジェルではなく、ジャクリーンに変更したいきさつを説明しました。
自分が編集長にとどまるために、長年一緒に仕事をしてきたナイジェルを裏切ったわけですね。
ミランダは、編集長が務まるのは自分しかいないと、傲慢なほどの自負心を語ります。
まあ、タイトル通り「悪魔」って感じですね。
また、ミランダはアンディに「あなたは私に似てるわ」と言います。
ミランダにしてみると、最高の誉め言葉の部類に入るはずです。
しかしアンディは「わたしは違います。ナイジェルにあんな仕打ちはできない」と冷ややかに否定します。
ミランダは、アンディもエミリーに対して同じようなことをしたと指摘。
アンディが否定しても、「あなたの決断よ。先へ進もうと決めた」とミランダはあくまでアンディの選択であり、決断だと主張するんですね。
責任転嫁するような話のもっていき方も、「悪魔」って感じです。
アンディは「”この世界”を望んでいなかったら?」「あなたのような生き方が嫌だったら?」と畳みかけますが、ミランダは「誰もが憧れている」とまったく受け付けません。
アンディは、ここではっきりと目が覚めたのではないでしょうか。
この「はっきり」感は、原作では明確に表現されています(後述をご参考ください)。
そして自分が本当にやりたいことは何なのか、そしてやりたくないことは何なのか、明確に自覚した瞬間だったろうと思います。
【アンディが本当にやりたいこと】
ジャーナリストになること
(ランウェイの仕事は本当にやりたいことではない)
【アンディがやりたくないこと】
ミランダのような生き方
「ああはなりたくない」と思ってる相手から、「わたしと似てる」と言われたら、心外ですよね。
タクシーを降りると、アンディはそのまま会場とは別の方向へ歩き出します。
ミランダからの携帯が鳴ると、噴水に放り投げて去りますね。
ネットを見ると、「あんなふうに仕事を放り投げていいのか」と納得いかない人も結構いるようです。
たしかに、常識的なビジネスマナーがあれば、考えられないですよね。
「どうして、あのタイミングで、アンディはミランダの元を去ったのか?」
理由は2つです。
(理由1)映画で鮮やかに「決別」を表現するため
ネイトに「必ず電話を取るその人物と君は “密接な関係”にある」と言われたアンディ。
あの場面でミランダからの電話を取ったら、「決別」の感じが出ませんよね。
大切なのは、「きっぱりと決別する」という意思が、視聴者に伝わることです。
「あんなの現実的じゃない」と思う人はいるでしょうが、これは「映画」なので、あの演出がベストだと思います。
(理由2)原作に近い演出にするため
後述しますが、原作の小説と映画では、ラストが少し違います。
原作には、ミランダがナイジェルを裏切るという話はありません。
でも原作でもアンディは、パリで突然ランウェイを辞めることになります。
そういう原作の「突然」という状況を、映画にも残したかったのかもしれません。
【プラダを着た悪魔・解説】原作と映画では最後(ラスト)が違う!
『プラダを着た悪魔』は、原作の小説と映画で、登場人物やストーリーが少し異なっています。
ラストのアンディとミランダの関係に絞って、原作はどうなのか簡単に紹介しますね。
- ミランダがナイジェルを裏切るという展開はない
- アンディはライター志望
- 恋人の名前はネイトではなく、アレックス
- パリに同行した時点で、バイト11カ月目
- 1年たったら、ミランダがアンディの希望する「ニューヨーカー」編集部を紹介する予定
- パリ滞在中、親友リリーが飲酒運転で事故を起こし、意識不明の重体に陥る
- 恋人アレックスから、リリーのためにすぐ帰国するよう連絡がくる
アンディは「意識不明のリリーの元に行っても自分にできることはない」と判断。
「帰国するつもりはない。仕事を取ります」と宣言し、ミランダも喜びます。
原作では、ミランダはこのタイミングで「あなたは若い頃の私によく似てる」と言うんですね。
そしてミランダは悪魔のようなパワハラを、パリでも発揮。
「娘たちのパスポートが、先週で期限が切れてた。パリに来られるよう、何とかして」と無茶を言うのです。
パスポートの期限を確認していないアンディが悪いと言われ、「親もベビーシッターもいるのに」とアンディは怒ります。
原作の小説を引用してみましょう。
わたしと自分が似ている?ふざけるな、ミランダ。
なによりかにより嫌でたまらないのは、ミランダの言い分が正しいかもしれない、ということだ。
いつも青筋を立てているこの悪魔みたいな女にこき使われ、ばかにされ、侮辱されつづけているのは、いったいなんのため?
ひょっとしたらひょっとして、わたしも三十年後にはこの会場のセレブ席にすわっているのかもしれない。
わたしを毛嫌いしているアシスタントを連れて、義務感からわたしを慕っているふりをしている大勢のひとたちに囲まれて。
引用元:早川書房『プラダを着た悪魔(下)』
で、ブチ切れて「あなたなんて、あなたなんて……くたばっちまえ」とミランダに言ってしまうんですね。
そしてそのまま仕事を放り出して帰国。
激怒したミランダは、アンディを解雇します。
ミランダは、買いためたブランド物の服をリサイクルショップですべて売り、1年分の生活費をねん出。
自力で文芸誌に短編小説を採用してもらい、ライターとしての道を歩き始める、というのが原作の結末です。
原作の方が、映画よりもぶっ飛んでる感じです。
ちなみに、アンディとネイトの関係も、原作と映画では違っています。
詳しくは、こちらの記事をご参照ください。
【プラダを着た悪魔・解説】最後(ラスト)にアンディが仕事を辞めた理由のまとめ
映画『プラダを着た悪魔』はラストの展開が速いので、少し分かりにくいところがありますね。
以下がこの記事のまとめです
【アンディが突然仕事を辞めた理由】
- 自分が本当にやりたいこと、やりたくないことを自覚したから。
- あのタイミングで突然辞めたのは、「きっぱり決別」感を映画で演出するため
【原作と映画の違い】
- 原作にはミランダがナイジェルを裏切るという話はない
- 原作では、アンディがミランダに暴言を吐いて解雇される