不朽の名作『タイタニック』は、実際にあった海難事故を元につくられています。
しかしドキュメンタリー映画ではないので、「どこからどこまでが実話?」と気になる人も多いでしょう。
この記事では、
- 映画『タイタニック』は、どこまでが実話?
- ジャックやローズは実在の登場人物?
について、解説します。
なお、この記事の参考文献等は以下の通りです。
- ダニエル・アレン・バトラー『不沈タイタニック 悲劇までの全記録』
- 英語版タイタニックwiki
- 2021年2月3日放送『ワールド極限ミステリー』
2023年6月に起きたタイタニックツアー潜水艇の事故については、別の記事にまとめたよ
【最新】タイタニック潜水艇の場所はどこ?乗客や内部はどうなってる?
【タイタニック】どこまで実話?ローズやジャックは実在しない架空の人物!
映画『タイタニック』は、実話を元にしていますが、ノンフィクションのドキュメンタリー映画ではありません。
どこからどこまでが実話なのか、気になりますよね。
ジャックやローズは実在しない架空の人物!
主人公のジャックとヒロインのローズは、実在しません。
ただ実際、乗組員に「J・ドーソン」という名前の男性がいたそうです。
ただし、「ジャック・ドーソン」ではなく「ジョセフ・ドーソン」。
ジョセフ・ドーソンは、帆の調整をするアイルランド人の船員で、海に落ちて低体温症で亡くなっています。
キャメロン監督は、ジョセフ・ドーソンの存在を知らずに、「ジャック・ドーソン」という架空の登場人物を描いています。
偶然にしては、すごいですね!
ローズも架空の人物なので、
- ローズの母親のルース
- 婚約者のキャルドン
- キャルドンの執事のラブジョイ
も実在ではありません。
実在した登場人物は誰?
映画『タイタニック』の主要登場人物は、架空なのですね。
しかし、マーガレット・モリー・ブラウンなど、他の登場人物の多くは実在しています。
沈没する時に甲板で、牧師を囲んで祈る人たちも登場しますね。
実際に、バイルズ神父を囲んで三等客たちが祈っていたそうです。
乗組員も実在の人物ですが、映画と事実では、遭難時の行動が多少異なります。
実在の登場人物の顔写真(キャストと本人)や、その後どうなったかについては、別の記事に詳しくまとめていますので、ご参照ください。
映画冒頭の海底シーンは本物
映画の冒頭で、トレジャー・ハンターのブロックが、沈没したタイタニック号の船内を探索する映像が出てきます。
あの海底シーンは、本物のタイタニック号です。
また、一部ミニチュア模型も使っているそうです。
キャメロン監督は、1995年9月に12回タイタニック号の深海探査を行っています。
タイタニック号は大西洋の真ん中、3800mの海底に沈んでいるとのこと。
探査機が船にたどりつくのに、2時間半かかったそうです。
最近では、2019年現在のタイタニック号の姿を、イギリスのBBCが放映しています。
また、2023年6月に、タイタニック見学ツアーの潜水艇の事故が起きました。
別の記事にまとめていますので、ご参照ください。
タイタニック号の内装を忠実に再現
映画『タイタニック』の船内の内装は、実物にかなり忠実に作られています。
本物のタイタニック号の画像を見てみましょう。
上の写真は、船内でも印象深いホールの大階段ですね。
いまにもジャックとローズが下りてきそうです。
こちらは、階段の上から見たところ。
Desde mayo de 1911 hasta marzo de 1912, unos 3.000 profesionales se dedicaron a equipar el interior del Titanic. pic.twitter.com/4FFN02z2kd
— Gema Bonnín (@GemaBonnin) April 14, 2017
一等客室を見てみましょう。
料金は1人500万円以上したそうなので、すごく豪華ですね。
下も一等客室のお部屋。一流ホテルのスイートルームという感じですね。
次の写真は、一等客用食堂。
ジャックがディナーに招かれた場所です。
下は喫煙室です。
ディナーの後、男性陣は喫煙室でブランデーをたしなむ習慣がありました。
ちなみに、豪華客船タイタニック2号が、2022年に処女航海することが決まっているそうです。
外装や内装も、初号船をそのまま再現しているそうです。
世界中のお金持ちが乗船しそうですね。
氷山があるのになぜ速度を上げたの?
映画では、他の船から氷山の警告を受信した後、スミス船長が「速度を上げろ」と命じる場面があります。
実際、事故に遭った日は、22.5ノットで進んでいました。
タイタニック号の最高速度は23ノットなので、ほぼ最速といっていいでしょう。
どうしてスミス船長は、氷山の警告を朝から6回も受信していたのに、そんなにスピードを出していたのでしょう?
スミス船長は、氷山を警戒して予定より18キロ南の航路に変更しています。
しかし、タイタニック号を所有する会社のブルース・イズメイ社長の希望が、船長にはプレッシャーになったようです。
社長は、
- 姉妹船オリンピック号の記録を更新したい
- 予定より早くニューヨークに着きたい
と思っていました。
大きなニュースとなって、良い宣伝になるだろうと考えたのですね。
事故の経緯は、ほぼ事実通り
タイタニック号の事故の経緯や顛末は、ほぼ事実通りに描かれています。
映画『タイタニック』の公開に際して、タイタニック財団も学者たちを集めて、乗客の調査を行いました。
世界中から手記や資料が集まったそうです。
またこの調査により、日本人生存者の細野正文氏についても、詳しい経緯が判明しています。
氷山を見落としたのはなぜ?
タイタニック号の事故当時、見張り台にいたのはフリートとリーでした。
衝突したのは、海から18メートル出ていた大きな氷山。
フリートやリーは、なぜ大きな氷山に直前まで気づかなかったのでしょう?
氷山を見つけるには、かなり条件が悪かったことが指摘されています。
- 深夜の航行中だった
- 月の光がまったくなかった
- 凪で波がなく、海面がガラス板のように穏やかだった
- 双眼鏡がなかった
- 氷山の色が青かった
波が穏やかだと、氷山にうねりや船の三角波が当たらないため、水しぶきも上がらず、見つけにくいのです。
また、出航直前に乗組員の異動がありました。
双眼鏡責任者が船を降りる際、双眼鏡を自分のロッカーに入れてしまったのでした。
それで、フリートたちは双眼鏡なしで見張りをすることになってしまったのです。
不運な条件がいくつも重なって、氷山に気づけなかったと言えるでしょう。
氷山に衝突しても危機感のない乗客がほとんど
映画では、パニックにならないように、乗組員が客に「沈没する」とは伝えていませんね。
実際もそうだったようです。
また映画では、甲板で氷山の氷を蹴って遊ぶ客の様子も描かれていました。
これも事実で、客たちは事実を知らされていないこともあってか、あまり危機感がなかったそうです。
「氷山を見たことがないから、見に行こう」という感覚で、デッキに上がった客もいました。
氷をニューヨークへのお土産に持ち帰ろうとした客もいたそう。
しかし、それから1時間とたたないうちに、大変なことになったのです。
救命ボートが半数だったのは景観のため?
映画では、「景観が悪いから」という理由で、救命ボートが乗船者の半数分しか積んでありませんでした。
『不沈タイタニック 悲劇までの全記録』によると、
- 救命ボートが半数分=事実
- 景観のために数を減らした=創作
のようです。
景観のためではなく、経費削減のために減らしたと証言されています。
イズメイ社長は、会議で48隻の救命ボートを搭載する案を提示されますが、経費を理由にその場で却下したのです。
実は当時の法律だと、乗客数分のボートを用意しなくても違法ではありませんでした。
一応、商務省の規定の数のボートは乗せていたのです。
48隻案を提示した造船所の常務は、
「我々は二時間を費やして一等船室のカーペットについて議論し、救命ボートについては15分しか割かなかった」
と後に証言しています。
タイタニック号の事故の後、救命胴衣やボートは、乗船者の人数分そろえることが義務化されたそうです。
避難は女子供優先だった?男性はどれくらい助かった?
スミス船長は、「女性や子供を優先避難」と乗組員に命じていました。
救命ボートは、
- 右舷:1号艇~8号艇
- 左舷:9号艇~16号艇
- 折りたたみボート4艘
の20艘しかありません。
左舷の乗組員たちは、船長の命令を厳格に守り、「女性と女の子と幼児の男の子」しか乗せませんでした。
10歳くらいの男の子すら乗せなかったのです。
右舷はまだ臨機応変で、女性と子どもがいなければ、男性も乗せていました。
映画で、婚約者のキャルドンが右舷に行ったのは、右舷の方が男性も乗れたからです。
事故当時、タイタニック号に乗っていたのは、
- 乗客1320人
- 乗組員892人
- 合計2212人
このうち助かったのは、約1/3の705人だけ。
- 生存者は、705人(約1/3)
- 男性の生存率20%
- 女性の生存率74%
- 子どもの生存率50%
- 女性の一等客の生存率97%
一等客の女性で亡くなったのは4人だけです。
一等客の女性優先で避難したことが分かります。
救命ボートには何人くらい乗ったの?
映画では、定員65人の救命ボートに12人しか乗せてない場面がありましたね。
あれは事実で1号艇には12人しか乗っておらず、あと30人は余裕で乗れたと言われています。
どのボートも、定員より少ない人数しか乗せていませんでした。
乗船者の3分の1しか助からなかったのは、そのためです。
特に左舷側は、ボートにはだいぶ余裕があるのに、10歳くらいの男の子すら乗せませんでした。
そのため、母親だけがボートに乗ったという親子もいたそうです。
マーガレットは乗組員を脅して救助に向かった
Molly Brown (July 18, 1867 – October 26, 1932). Molly Brown never tolerated the snobbishness of the Victorian rich, and it was her actions on the Titanic forcing officers to save lower class passengers that would give her the immortal nickname “The Unsinkable Molly Brown.” pic.twitter.com/oT8p45KbiF
— Netflix Geeked (@NetflixGeeked) September 25, 2020
映画では、一等客のマーガレット・モリー・ブラウンが、海に落ちた人を助けに行こうと呼びかけました。
しかし、他の人たちの反対で諦めていましたね。
あれは事実ではありません。
事実はこうです。
マーガレットが「助けに行こう」と言うと、操舵員のロバート・ヒッチェンスが強く反対しました。
しかし、同乗していた女性たちは「体を温めたいから」と言って、マーガレットに従って船をこいだのです。
ヒッチェンスは止めようとしましたが、マーガレットが「一歩でも近づいたら海に投げ込んでやる」と脅し、黙らせたのです。
しかしヒッチェンスと言い争っている間に、海に落ちた人たちは力尽きてしまったそうです。
この逸話から、マーガレットは「不沈のモリー・ブラウン」とマスコミからあだ名をつけられました。
また、他の複数の救命ボートでも「助けに行こう」と乗組員が提案しましたが、他の客に反対され断念しています。
映画でローズを助けに行ったボートがありますね。
実際に、ロウエ五等航海士のボートが、海に落ちた人たちを救助に向かっています。
航海士マードックが乗客を射殺して自殺したのは、創作
映画では、一等航海士のマードックが、無理やり救命ボートに乗り込もうとした三等客のトミーを銃で撃ちます。
そして、自らも銃で自殺してしまいますね。
このシーンは、事実ではありません。
マードックは、傾いたタイタニック号から落ちて死亡しています。
無理やりボートに乗ろうとした男性を、船員たちが拳銃で威嚇していたのは事実です。
しかし、銃弾が入っているものと、ないものがあったことが分かっています。
結果、マードックは乗客を射殺してもいないし、自殺もしていません。
「船員が客を射殺した」という場面は、創作です。
そのため映画が公開されると、マードックの遺族が抗議し、20世紀フォックスの副社長が謝罪しています。
【タイタニック】解説・考察記事一覧
【タイタニック】どこまで実話まとめ
映画『タイタニック』は、実話を元にしていますが、ノンフィクションではありません。
- 主人公のジャックとローズは、架空の人物
- 主要登場人物以外は、客も乗組員もほぼ実在の人物
- 映画冒頭の海底シーンは、本物のタイタニック号
- 映画では、タイタニック号の内装を忠実に再現している
- 氷山があるのに最高速度で進んだのは、船長が社長の言葉にプレッシャーを感じたからと言われている
- 映画では、遭難事故の経緯がほぼ事実通りに再現されている
- 映画のように、氷山に衝突しても、危機感のない客がほとんどだった
- 救命ボートが半数だったのは、景観のためではなく経費削減のためだった
- 避難は女子供優先で、男性の生存率は2割ほど
- 救命ボートは、定員以下しか人を乗せなかったため、乗船者の3分の2が死亡した
- マーガレット・ブラウンは、乗組員の反対を押し切り、他の女性客と一緒に、海に落ちた人を助けようとした
- 航海士マードックは、乗客を射殺していないし自殺もしていない
2023年6月22日現在、U-NEXTでは、以下の関連動画が配信されています。
・『タイタニック 水との闘い』(BBC制作の再現ドラマ)
・『シン・タイタニック』2022年アメリカ制作
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※本ページの情報は23年6月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。