SNSでは、映画『おおかみこどもの雨と雪』の感想として、「雪がかわいそう」というコメントが多く見られます。
「雪がかわいそう」という感想は、「花は、雨には優しいけど、雪はほったらかし」「親の愛情が、偏ってる」というもの。
特に映画後半で、嵐の学校で待ってる雪を迎えに行かなかったことが、印象強いようです。
- 花は、本当に雪より雨を可愛がってるのか?
なぜ、雪が冷たくされてるように見えるのか?
について、心理学の視点も交えて考察しました。
【おおかみこどもの雨と雪】雪がかわいそうの声多数!花が雨ばかり可愛がるのはなぜ?
最新作公開記念
— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) June 27, 2021
3週連続細田守監督SP#おおかみこどもの雨と雪
金曜よる9時
おおかみおとこと
人間の間に産まれた
おおかみこどもの成長と
無償の愛を注ぐ母の
13年間にわたる物語
大自然の中で育まれる
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SNSなどでは「雪がかわいそう」という感想が結構多く見られます。
「花が、雨ばかり可愛がって、雪は構ってもらえない」という、姉弟の愛情格差が主な理由です。
確かに嵐の日に、花が雪ではなく雨を優先したのは、インパクトがありましたね。
けれど、個人的には「花は、雨ばかり心配して、雪を冷遇してる」とは特に思わなかったんですね。
なので、もう一度映画を見直して、「どこら辺が、雪より雨を可愛がってるか」を確認・考察してみました。
【検証】花は雨ばかりかわいがってる?
花が、雪より雨に優しく見えるシーンは、確かにいくつかありました。
ひとつずつ確認してみましょう。
雨が猫にひっかかれたシーン
雨が猫に引っかかれてケガするという場面がありました。
雨は「大丈夫、大丈夫して」と甘え、花は雨の背中をさすってあげます。
三毛猫に負けて花に甘える雨に、雪はかなりイラついた様子を見せました。
雪は、「そんなんじゃ生きていけないよ!」と雨に活を入れ、自分はイノシシより強いとアピール。
花に「すごいね」と褒めてもらいたかったのでしょう。
しかし花は雪をほめず、「他の動物に偉そうにしないで、お願い」と優しくお説教しました。
「息子の背中をさする母親」「娘を注意する母親」という状況から、「雨には優しいのに…」と見えてしまいそうです。
けれど、よーく見るとそういうわけでもありません。
猫に引っかかれて泣く雨に、花は手当てしながら「大したことないわ」と言ってるのです。
そして、雪には「お願い」と言って、お説教しています。
花は、どちらの子どもにも淡々と接しており、「ひいきしてる」感はありません。
正直、「子どもに、お願いする形で注意する親がいるんだ。すごく優しい親だな」と個人的に驚きました。
「他の動物に偉そうにしちゃだめって、いつも言ってるでしょ!!」と叱りつける親の方が、現実には多いのではないでしょうか。
雨が川でおぼれたシーン
まだ小学校にあがる前に、雨が川でおぼれるシーンがありました。
雪が飛び込んで助けましたね。
かけつけた花は、横たわった雨をとっさに抱きしめます。
裸の雪も、隣でゼーハーと肩で息をしていましたが、花は雪に声をかけず、雨しか見えていないようでした。
「雪には、何も言ってあげないの?」という感じは、確かにありますよね。
けれど、雨が話し終わった後は、花は二人の子どもを両手に抱きしめていました。
なので「雪がほったらかし」という風にはなっていません。
花は、雨の不登校を注意しない
小学校に上がったものの、いじめられたりして学校になじめない雨は、たまにしか学校に行きません。
花は、そんな雨に「学校に行きなさい」と注意しませんでした。
新川自然観察の森に、息子同伴で出勤していましたね。
人によっては、「雨に甘くない?」と思えるかもしれません。
花は元々、雪を生んだ時に、自分の生き方は自分で決めてほしいと言っていました。
雨に対しても、同じ気持ちだったでしょう。
人間として生きるか、オオカミとして生きるかは、本人が決めることだと思っていたのですね。
型にはめる生き方を強要するつもりはなかったのだと思います。
だから「学校に行きなさい」とは言わなかったのでしょう。
「オオカミは、どうやって大人になっていくんだろう?」と思っていた花は、人間社会にうまくなじめない雨をどう育てるか、模索していました。
たぶん雪が登校拒否になっても、同じ態度だったろうと思います。
雪にワンピースを縫ってあげた
学校で、「女の子の友達は、宝物箱に動物の骨を入れたりしない」と気づいた雪は、もっと女の子らしくしようと決意します。
その話を笑いながら聞いて、花は「自分の好きなようにしたらいいじゃない」というようなことを言いました。
そして、雪のためにワンピースを縫ってあげましたね。
雪は「このワンピースに、どれだけ救われたか分かりません」と言っています。
友達からの評判も上々。
このエピソードから、やはり「花は、雨ばかり可愛がる」わけではないと思いました。
雪と雨のケンカで片方のかたをもたなかった
学校に行かずたびたび山に入る雨と、学校で人間として生きたい雪が、ケンカになるシーンがあります。
おおかみの姿で転げまわって争いますね。
この時、花は「どちらか片方の味方になる」というような態度をとりませんでした。
また、「片方だけなぐさめる」こともしていません。
これは観ていて、子どもに対して公平な態度に思えました。
学校でオオカミになった雪を責めなかった
雪は、学校で草平をケガさせてしまいます。
校長室で無言でいる雪に、花は珍しく「謝りなさい」と強い口調で言いましたね。
けれど、車の中で泣きじゃくって詫びる雪を、ひとことも責めませんでした。
逆に抱き寄せて「大丈夫、大丈夫」となぐさめます。
リアルな普通の親だと、「どうしてオオカミになったの!?絶対ならないって約束したでしょう!」みたいに怒鳴る人も、割といるでしょうね。
花はくわしく事情も聴かず、雪の気持ちを察して、叱ったりしませんでした。
雪に対する信頼と愛情を強く感じる場面だったと思います。
花が雪を迎えに行かず、雨を追いかけたのはなぜ?
花と、雪・雨の親子関係で、だいぶ目立つ印象だったのは、「嵐の日に、花は雪を迎えに行かなかった」という場面ではないでしょうか。
シーンを振り返ると、
- 天気が豪雨となり、学校から家庭へ迎えに来るよう連絡
- 花は、学校へ雪を迎えに行こうとする
- 花は、雨が傘もささずに山へ向かう姿を見る
- 花は、雪を迎えに行くのをやめて、雨を追って山に入り遭難
という展開でした。
「花は、雪ではなく雨を選んだ」という行動がはっきり見える構成になっています。
なので、「花を信じて、ずっと待ってる雪がかわいそう」と思いますよね。
わたしも「花は心細いだろうな」と思いました。
ただ、あの場面でどちらを取るかと聞いたら、多くの親は雨を追うのではないかとも思いました。
少なくとも、わたしならそうします。
なぜなら、
- 雪は学校にいて、先生もおり、比較的安全な場所にいると判断できる
- 雨は、傘もささずに土砂崩れの起きそうな山へ行き、何かあっても助ける人がいない
という状況だったからです。
傘なしで出かける雨を見ながら、声もかけずに雪を迎えに行ったなら、そちらの方がよほど問題な気がします。
もちろん、リアルな世界の親なら
- 学校へ「迎えに行けない」と連絡する
- 雨が山へ入ったと、警察に連絡する
などの対応もするでしょう。
けれど、これは映画であり、作り話なのです。
「花がこういう行動をしないと、次の展開がああならない」という計算された場面設定なわけですね。
雪と草平が、お互いの秘密の部分を打ち明け合う、ドラマチックな嵐のシーンをつくれないわけです。
現実世界と映画や小説のリアリティは違います。
制作側は、「花は雪に冷たく、愛してない」と表現しているわけではありません。
けれど結果的に、「雪がかわいそう」と感じる人が多く出たのですね。
これは映画の構成・構図上、「雪がかわいそうに見えてしまう」わけです。
確かに、一人でぽつんと親を待つ子どもはかわいそうです。
でも、花が、意地悪でわざとそうしているわけではありません。
やむにやまれぬ事情があったわけで、雪を愛してないわけではないのです。
親の愛は「母は心配」「父は信頼」
これまでひとつずつ見てきましたが、キストが入ります。
- 花は、雪につらく当たっていない
- 花は、雨ばかりを可愛がっているわけでもない
と思います。
個人的には、「子ども二人を、かなり公平に扱っている親」という印象を持っています。
リアルの現実世界で、花くらい子どもを公平に扱おうとする親は、かなり少ないのではないでしょうか。
花は、「どうやったら、この子を自立した大人に育てられるか」ということをいつも考えて行動しています。
その点で、子ども二人に対してとても公平な態度です。
- 雪は、食欲も旺盛で、イノシシより強いくらいタフ
- 雨は、繊細で病弱
というそれぞれの個性があります。
雨は、「おおかみはどうしていつも悪者なの?」と言って泣く、感受性の強い繊細な子どもです。
学校社会にもなじめず、いじめられて浮いてしまっています。
雪は、そんな雨をかばったりするくらい、ある意味「余裕」がある子ども。
「どちらが自立が難しそうか」と見た時に、どうしても雨に意識がいくのだと思います。
さらには病弱ですしね。
もちろん、子どもの側からすると「いくらしっかりしてると言っても、雪も子どもなのだから、親にかまってほしい」のは、そうだと思います。
雪も分かっているはず。
だから、雪にワンピースを作ってあげたのでしょう。
親の愛情は、基本的に
- 母親の愛は、心配という形(何かと構う)
- 父親の愛は、信頼という形(黙って見守る)
で表れやすいと思います。
花は、雨には心配という形で、雪には信頼という形の愛情をこめていると思います。
【心理学的考察】なぜ雪がかわいそうに見えるのか?
『おおかみこどもの雨と雪』では、嵐のシーンで構成上どうしても、花が雨を優先しているように見えます。
そのため、「雪がかわいそう」と感じる人は多いようです。
中には、雪に同情するあまり、「花が大嫌い」と思う人もいます。
その一方で、「雪がかわいそう」と感じない人がいることも事実。
この違いは、どこから生まれるのでしょう?
- 嵐のシーン以外で、「雪がかわいそう」と思った人
- 「花は、雨ばかり可愛がってる」と感じた人
は、「雪に自分を投影している」せいかもしれません。
投影とは心理学用語で、簡単にいうと、「雪の境遇に、自分を重ね合わせている」ということですね。
「お母さんは、いつも妹ばかり可愛がってる」
「お母さんは、お姉ちゃんのことはいつも褒めるのに、わたしのことは褒めてくれない」
など、「他の兄弟と差をつけて育てられた」と感じている人は、「雪がかわいそう」と感じ、心を揺さぶられやすいでしょう。
「わたしは親の愛情を、十分に受けられなかった。すごく我慢した」と思っている人は、雪の立場で映画を観てしまうのです。
そういう心理的な働きがあることを知った上で映画を観ると、また違った見え方になるかもしれませんね。
母親は息子の方がかわいい?
さて、ここからは一般論の話をします。
娘と息子がいたら、母親は息子の方がかわいいのでは?ということですね。
たとえば美輪明宏さんは、トーク番組などでよく「母親は、息子の方がかわいいというのは常識です」と言っています。
そして、父親は娘の方がかわいいんですね。
家庭差はあるでしょうが、何となく理解できるように思います。
また、ある心理カウンセラーさんが講演で、「母親からすると、娘は自分のコピーと感じる」と話していました。
特に、「母親が長女で、娘も長女」という関係だと、確執や葛藤が生まれやすいそうです。
自己嫌悪や同族嫌悪みたいな感情が混じってしまうんですね。
また、「娘は自分のコピー」と思ってるので、扱いが雑になってしまうこともあるわけです。
『おおかみこどもの雨と雪』では、花は一人っ子で長女、雪も長女でした。
容姿もそっくりでしたが、タフさにおいても、ある意味似てましたよね。
「わたしに似てるから、雪は大丈夫」という感覚だったのかもしれません。
雨に「おおかみおとこ」の面影を見てる?
雨は、成長するにつれて、容姿がお父さんにそっくりになりましたね。
Tシャツのえり首がのびてるところまで、似てました。
花が、雨の中に夫の面影を見いだすのは、容易だったと思います。
実際、劇中でも「雨の後ろ姿が、夫に見える」というシーンがありましたね。
「花は、雨の中に夫を見て、恋愛に似た感情があったのでは?」という考えも、できそうな気はします。
しかし映画では、それを匂わせるシーンがないので、制作側の意図にはないようです。
個人的にはどちらかというと、「雨は、夫の子ども時代に見えた」のではないかと思うのです。
「夫の子ども時代は、雨みたいだったかな」とは思ったのではないでしょうか。
「おおかみおとこ」は、幼い頃に両親を亡くし、大きな秘密を抱えて親戚の元で育ちました。
花も、高校までに天涯孤独となっています。
一人で生きることの大変さや心細さを、誰よりも知っているのです。
雨に夫の面影を見て、雨と夫の両方を大切にしようと心掛けていたかもしれませんね。
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【おおかみこどもの雨と雪】雪がかわいそうの考察まとめ
映画『おおかみこどもの雨と雪』では、「花は、雨にだけ優しい」「雨ばかり可愛がってる」などの理由で「雪がかわいそう」という感想が、結構多く見られます。
- 嵐のシーンでは、構成上どうしても、花が雨をひいきしているように見える
しかしよく見ると、花は二人の子どもに、かなり公平に接している
一般論では、母親は息子の方がかわいいと感じ、娘は自分のコピーのように感じる
成長した雨に、夫の面影を感じていた可能性は高い
「自分は親からあまり可愛がられなかった。兄弟と愛情格差があった」と思ってる人は、雪に同情しやすい
というのが、この記事のまとめです。