不朽の名作アニメ『風の谷のナウシカ』で、腐海で王蟲と会ったナウシカが「あの人が生きてるの?」と言う場面があります。
この「あの人」とは誰か、ネットでは「アスベル」と「王蟲の子」で意見が2つに分かれています。
この記事では
- 「あの人」とは王蟲の子で、アスベルではない
- 同じ場面の原作漫画との違い
について解説します。
この記事は、原作漫画『風の谷のナウシカ』を参照しています。
【ナウシカ】「あの人」とは王蟲の子でアスベルではない
映画『風の谷のナウシカ』で、腐海で王蟲と対話したナウシカが「あの人が生きてるの?待って、王蟲!」と言う場面があります。
「あの人」と誰か、ネットでは
- 王蟲の子
- アスベル
という2つの意見があり、「あの人=アスベル」だと思っている人が大半のようですが、
あの人=王蟲の子
(ナウシカが子どもの頃に飼っていた)
です。
なぜ王蟲の子と判断できるのか、理由を解説します。
場面展開から、「あの人」は昔飼ってた王蟲の子
まず場面展開から振り返ってみましょう。
- アスベルがトルメキア船を襲撃し、ナウシカが止めようとする
- 一瞬攻撃をためらったアスベルは、逆に撃墜される
- 混乱に乗じ、ナウシカはミトとクシャナと一緒に脱出
- ナウシカたちが腐海に水上着陸
- 王蟲がナウシカを調査
- 「ランランララ…」のBGMでナウシカの子ども時代のプチ回想シーン
- 「あの人が生きてるの?待って、王蟲」とナウシカがいい、王蟲が去る
- ナウシカが、蟲を殺したアスベルを助ける
- 流砂にのまれて、ナウシカとアスベルは腐海の底に落ちる
- ナウシカは、子ども時代に飼っていた王蟲の子の夢を見る
ナウシカの子ども時代の回想シーンの後に、ナウシカが王蟲に「あの人は生きてるの?」と尋ねます。
上で言うと⑦ですね。
黄色い草原と大きな木の映像が出てきます。
腐海の底でナウシカは子ども時代の夢を見ますが、
- 夢の映像が全部⑥の回想シーンと同じ色
- BGMが同じ(ランランララランランラン…)
ということから、
王蟲と対話中の回想シーン=腐海の底で見た子ども時代の夢
と同じ内容であることが分かります。
ナウシカは、子ども時代にこっそり隠れて王蟲の子を飼っていました。
しかし大人たちに見つかって、取り上げられてしまいます。
幼いナウシカは「お願い、殺さないで!」と号泣しますね。
もしかすると殺されてしまったかもしれないということが、大きくなっても、ナウシカの心のどこかにずっと引っかかっていたのでしょう。
セリフは出てきませんが、王蟲はナウシカに、あの王蟲の子は今も生きてると教えたのでしょう。
だからナウシカは「あの人が生きてるの?」と訊いたのです。
昔飼ってた王蟲が、今はどうしているのか、もっと知りたかったはず。
だから「待って、王蟲!」と言ったのです。
思いがけず生きてることが分かったので、夢の中で子ども時代の記憶がよみがえったのでしょう。
つまり、⑥のプチ回想シーンは、⑩の夢の伏線になっているんですね。
「あの人=アスベル」とすると場面展開が不自然
さらに踏み込んで「あの人=アスベル」と仮説を立てるとどうなるか、考えてみましょう。
王蟲がナウシカを調べた時に、なぜ子ども時代の回想が出てくるのか、話がつながらなくなってしまいます。
「なんで子ども時代の回想したの?そこで回想する必要ないよね?」となるんですね。
「あの人=アスベル」なら、アスベルを回想するのが自然です。
そのため、やはり「あの人=昔飼ってた王蟲の子」と判断できます。
ナウシカは蟲を「あの人」と呼んでいる(原作)
12月25日金曜ロードSHOW!「風の谷のナウシカ」よる9時放送!また地球は腐海に飲まれる、姫様マスクを~ pic.twitter.com/pxCzNaMJSP
— arin (@arin77777) December 18, 2020
場面展開から、あの人=王蟲の子であることが分かりました。
しかし中には、
- 蟲は人ではないから、「あの人」と呼ぶはずがない
- 「あの人が生きてるの?」と言った後に、アスベルを助けたから、アスベルのことだろう
と考えて、あの人=アスベルと判断する人もいるようです。
まず、原作漫画の中でもナウシカは、王蟲のことを「あのひと」と呼んでいます。
(「あのひと」と呼んでいるのは、違う場面です)
ナウシカの生き方のベースにあるのは、人間至上主義を否定した考え方です。
ナウシカにとっては、人も蟲も他の生き物も、序列などはなく同じように尊いんですね。
「虫ケラのように扱う」という言い回しが日本語にありますが、ナウシカはそういう考え方をしません。
むしろ王蟲を神聖な生き物だと思っているくらいです。
なお、蟲は人間ではないためか、原作では「あの人」ではなく「あのひと」という表記になっています。
ナウシカはアスベルを追ったわけではない
ナウシカはアスベルを助けるために、ミトたちと別行動をしたわけではありません。
場面展開をもう一度振り返りましょう。
王蟲に怪しい人間かどうか調査された時に、子ども時代のプチ回想シーンが入ります。
そして王蟲が去ったので「あの人が生きてるの?待って、王蟲!」とナウシカが叫びます。
- 自分が昔飼っていた王蟲の子が、今どうしてるか知りたい
- しかも王蟲の眼が赤くなって、一斉に移動している
気になるし、知りたいですよね。
追いかけていたら、アスベルがいたというわけです。
映画の冒頭で、ナウシカが王蟲に追われるユパを助けました。
困ってる人は、敵味方なく助けようとするのがナウシカですよね。
原作には王蟲がナウシカに言ったセリフが書かれてる
また、原作漫画にも同じようなシーンがありますが、王蟲がナウシカに何を言ったか、セリフが明確に書かれています。
アスベルのことを言っていません。
王蟲が何と言ったのかは、次の章で紹介します。
【ナウシカ】原作漫画には「あの人が生きてるの?」というセリフはない
映画でナウシカが腐海で王蟲と出会い、心を調べられるというシーンは、原作漫画ではどのようになっているのでしょうか。
(ここから先は、原作のネタバレを含みます)
まず同じところは
- 腐海に、アスベルとナウシカと城おじたちが落ちる
- 王蟲がナウシカを調べる
- ナウシカがアスベルを助ける
- ナウシカが、子ども時代に飼っていた王蟲の夢を見る
というところです。
違うのは
- クシャナは腐海に落ちていない
- 「あの人が生きてるの?」とナウシカが言う場面はない
- 王蟲がナウシカに言ったセリフが書かれている
- ナウシカがアスベルを助けようとするので、王蟲はアスベルへの攻撃をやめる
ということです。
映画と原作漫画では、同じ場面でも展開が少し違うんですね。
どうしてかというと、原作には映画に出てこない「土鬼(ドルク)」という大国が出てくるため、もっとストーリーが複雑なのです。
ちなみに、王蟲はナウシカに何と言ったのでしょう?
「コノ森ハ モハヤワレラヲ 必要トシテイナイ」
引用:『風の谷のナウシカ』(1巻)
この王蟲の言葉から、ナウシカは「腐海が世界を浄化している」ことに気づくのです。
ちなみに、映画と原作漫画では「王蟲が風の谷を襲おうとした後」の展開が違います。
- 王蟲のセリフは、映画のストーリーには必要ない
- しかし、ナウシカが子どもの頃に王蟲を飼っていた話は映画でも必要
であるため、映画の王蟲がナウシカに言った内容が違っているのです。
また、原作では王蟲がナウシカを調べた後、腐海が騒がしくなります。
ミトが「近くで蟲を殺した者がいるのか」と言い、ナウシカが助けに行くんですね。
行ってみたら、アスベルだったというわけです。
最初は二人で腐海を逃げ回っていますが、王蟲がナウシカを助けます。
そしてナウシカがアスベルを助けたいと願っているため、王蟲はアスベルを殺しませんでした。
王蟲はこう語ります。
小サキ者…ワガ一族ハ オマエヲ昔カラシッテイルヨ……
ワガ一族ハ個ニシテ全 全ニシテ個
時空ヲ超エテ 心ヲ伝エユクノダカラ
引用:『風の谷のナウシカ』(1巻)
そして、ナウシカが子ども時代に王蟲の子を飼っていた夢のシーンになります。
王蟲たちは仲間に起きた出来事は、時空を超えて一族で伝え合っているわけです。
昔、王蟲の子を飼っていたナウシカを、王蟲全体が世代を超えて知ってるんですね。
言ってみればナウシカは、王蟲の間では超有名人。
蟲を大切にするナウシカを、王蟲は殺さずに助け、ナウシカが助けようとしたアスベルも助けたんですね。
映画では王蟲は言葉をしゃべりませんが、王蟲の生態や考え方は、映画にも反映されています。
「個にして全、全にして個」であるために、映画でナウシカが出会った王蟲も、ナウシカが昔飼っていた王蟲を知っていたのです。
原作漫画は、映画よりもはるかに内容が濃くて面白いよ!
漫画読んだ時に「どうして今まで読まなかったんだろう?」と思ったくらいだよ
ぜひ読んでみてくださいね!
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※本ページの情報は2023年7月5日時点の情報となります。
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ナウシカの「あの人とは誰か」のまとめ
この記事では、映画『風の谷のナウシカ』で、ナウシカが王蟲に「あの人が生きてるの?」という場面について解説しました。
「あの人」とは誰なのか、ネットでは意見が「王蟲の子」「アスベル」と見解が分かれているようです。
- 「あの人」=ナウシカが昔飼ってた王蟲の子
- 場面展開から「王蟲の子」と判断するのが自然
- 原作でナウシカは、蟲を「あのひと」と呼んでいる
- 原作では、王蟲がナウシカに言ったセリフが書いてある(アスベルのことではない)